If?:破落戸と少女の最後の悪夢39


「『感電』

 機会としては中々無いが、見えざる凶器と、遠隔地からの殺害との相性が良い。

 この世界では抵抗出来なくはないが、一度痺れれば対応が困難な点は変わらない。

 環境さえ整えれば纏めて多数を標的に出来る。

 といったところだ。」

 厳しい口調の壮年男性の様な声が響きはするのですが、相手が、消えました。

 先程まで姿形が在った場所はもぬけの殻、声だけそこかしこから聞こえるだけ。

 しかも、その声はさきの男性とは全く別のものでした。


 「『脳挫傷』

 周囲の環境次第で容易に事故死に出来ましてよ。

 魔法なぞ無くとも物理の力のみで容易に引き起こせる死因ですから、この死因を引き起こす方法はワタクシ、幾らでも考え付きましてよ。」

 次に、人を見下す成人した貴族の女性の様な声が反響しました。

 バキャリという厭な音が背後から聞こえてきます。


 「『火災』

 たとえ自身の周囲の炎を魔法で如何こう出来たとしても、炎が生み出す建物の崩落や毒ガス、熱自体を防ぐ事が容易ではないのは解っている。

 魔法に慣れて炎の対策に慣れた人間ほど陥れるのは容易だ。

 更に、ある程度延焼の範囲や向きを操作出来、その考えに到る人間は僅かという事も良い。

 故に、事故や自然発火に見せかけるだけでなく、ある程度大規模に燃やして犠牲者を増やし、作為と露見した場合であっても『誰を標的としたか?』という当局の攪乱さえ出来る。

 人命だけでなく財産の破壊も行えるという点は大きい。」

 厳格で低い老人の声と共に自分の目の前に影が出来て、後ろで誰かが倒れる音が聞こえました


 「『脳出血』

 事故死だと思うんでしょうね…………。

 これだから魔法というヤツは素晴らしいんですよ………………。

 小規模ピンポイントで何かを破壊するのにはうってつけ……。

 血管一本だけ壊すっていうのは、中々面倒だな……と思っていたのですが、初歩的な魔法を弄れば簡単に出来るものなんですね……。

 これなら自然死に見せかけるのは簡単だ………。」

 気弱そうな男の声が聞こえてまた誰かが倒れた。

 「『爆死』

 これは多人数相手の時にぃ、戦意喪失とぉ、爆風による骨片攻撃、そして…死体丸ごとの隠滅が出来るわぁ。

 グロテスク、凄惨、非道。正に人殺しって感じねぇ。」

 艶やかな妙齢の女性の声と共に、あちこちでバン、バンと何かが弾ける音がして、辺り一面をが濡らしました。

 月は相変わらず隠れたまま。暗いこの環境ではそれが朱なのかは解りません。

 ただ、その後辺りに皆さんの怒号が響いた事、聞こえなくなった声が幾つもあった事が私に何があったかを教えてしまいました。



 「さーてさてさて、さってーと。お次はどんな殺害方法をお見せ、しよっか?」

 今度は無邪気な少年の様な声が聞こえた。



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