If?:破落戸と少女の最後の悪夢35
「意外と、多いですね。」
「だが、今回の運び屋は親切だったな。」
「車輪付き。便利。ラクチン。」
「ダーけどさ、これ、多いし、車輪が音立てるし、目立たない?」
「そう………ですね。さっきの仕掛けと言い、あまりに目立ち過ぎますね。
もし何か有れば、対応をお願いします。」
カラカラキュルキュルと音を立てながら行列を為す我々。
壁の凹みに触れた後、倉庫の壁が音を立てて割れ、中から30程の木箱が現れたのです。
木箱は積み上げられ、箱の下には車輪が取り付けられていたので、それを数箱重ねて10人程が車輪で転がして運び、手が空いた数人が周囲を警戒して、目的地まで歩いていました。
あちこちから向けられる視線が増えたのが解ります。
木箱には親切にも車輪が取り付けられ、重さと数の割には運びやすかったのですが、如何せん道の整備がされていないので揺れて音が鳴り、目立つので当然と言えば当然です。
ならば抱えて持てば………と思うのでしょうが、試しに木箱を一つ抱えて持とうとした
結果、数歩と歩けませんでした………。
複数人で持てば何とかなるのですが、木箱の数が数だけに一度に運びきれず、残った木箱を放置するのは危険。かと言って人数を二手に分けて運搬と見張りに分けて複数回木箱を運ぶのは時間的にも分散のリスク的にも問題が発生するので、目立つリスクを取る事となりました。
「ったく、一体何なんだ、この中身は。」
木箱を押しながらそんな疑問が聞こえてきましたが、その疑問の答えを私達は知りません。そして、今直ぐその疑問の答えを知る方法が無い訳では有りませんが、決して致しません。何故なら……
「私達はそれを知ってはいけないのですよ。
疑問に思う事は確かに学ぶ上で核となるものであり、重要なものであり、不可欠なものです。
ただ、この場合、その疑問は死に直結します。」
目の前にある木箱に視線を落としながら私はどんな顔をしていたでしょうか?
目の前にある木箱。
怪しむべき所の無い、何処にでも有る木の板を組んで作られた何の変哲も無い、車輪が付いているだけの木箱。
中身は無論一切見えません。
車輪で転がしていても解る重量。
中身は梱包されているのか、舗装されていない悪路で車輪が跳ねても中身が何なのか想像するヒントさえ無い。
一見して危険物では無いですし、如何でもいいモノに見えます。
だからこそ怖いです。
そんなものを運ぶだけの依頼が今迄の中で最も重要な仕事と位置付けられている。
そんなものな訳が有りません。中にはきっと、皆さんや私の思いもよらない物が入っているのでしょう。
何となくですが、この中には多分、死が沢山入っています。
箱を開けた途端、開けた者を確実に息絶えさせる様な、そんな予感がするのです。
「…………急ぎましょう。」
私の言葉に誰も、何も、返答する事は無く、我々は車輪が跳ねる音を響かせながら目的地へと急ぎました。
こんなものから早く逃れたいと思いながら。
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