If?:破落戸と少女の最後の悪夢24
ガキ……もとい、リザ=テイルは多分、有能だったのだろう。
俺達がリザの礼を貰った結果、俺達は様々な事を知った。教えて貰った。
目まぐるしく、目覚ましく、俺達の生活は変わった。
俺達は今、同じ世界を見ていても、別世界に生きていた。
ずっと見て来た光景。
ずっと過ごしていた普通。
ずっと、ずっとこれが普通だと、俺達にはこの世界だけが全てだと、明日には仲間が欠けていく………いや、もしかしたら自分には明日が無いかも知れないと怯え、恐れ、それを当り前だと思っていた。俺達は、日向へ行くのは無理だと思っていた。そんな事、出来ないからと行こうと挑戦した事さえも無かった。
知らない俺達は、そこに見えない壁があると思っていた。
そんな事は無かった。学んで、世界が変わって見えた。
俺達は先ず、衛生や栄養、健康と言う概念を知った。
下水の水を飲んで野垂れ死んだ奴、酒で飲んだくれて死んだ奴、食べるものが無くて肉ばかり食べて死んだ奴。
お前達が何で死んだのか、やっと解ったよ。
悪かったな、止めてやれなくて………………………
勉強と学習の意義を知った。
今迄表の連中がやっていた事を意味は無いと思い、俺達には知る必要が無いと思っていた………「何故そんなものを必要とするのか?」と首を傾げていた文字や知識、魔法を知って、その辺に転がっていたガラクタに書かれていたものに何が書いてあるか、それが何なのか、意味や正体を知った。
魔道具を作る際に出た有害な廃棄物、表で流通禁止になった薬剤、飼育を禁止された毒を持った生き物の死骸、俺達の周りには危険が溢れていた。
道理で人がバタバタ死ぬ訳だ……
馬鹿な理由で死んでた訳だ………
畜生が。
そう、俺達は学んだんだ。
俺達の生きる場所と、奴等の生きる場所に違いは無かった。
知れば知るほど世界が広がっていく!
知れば知るほど豊かになっていく!
そして、知れば知るほど悲しく、悔しく、臓腑の奥底から抑えきれない怒りが込み上げてくる。
俺達が何故ここに居る?
俺達は当然の様にここに居るわけではない。望んで居るわけでもない。罰を受けたが為にここに居るわけでもない。
だというのに、この劣悪な環境に何故当然の様に俺達は捨て去られている!?
俺達が何をした?
俺達は確かに罪を重ねた。奪い、犯し、壊し、殺し、暴れ、傷付けてきた。
だが、それは、それはここで生きる為にした事だ。
日向に居られたら……俺達は考える。
俺達は生きたくて生きて来た。
殺したくて、傷付けたくて、犯したくて、壊したくて、暴れたくて………そうして来た訳じゃ無い。
ロクでも無い奴等が居た。非道い奴等が居た。糞の方がマシな糞野郎も居た。
同時に、良い奴も居た。
怪我をした時に手当をして助けてくれたバンギン。
行き倒れて野垂れ死に賭けていた時に食い物を流し込んでくれたチャルース。
しくじって袋叩きにあっていた時に逃がしてくれたアーリン。
アルコール中毒に消毒用アルコールを狙われて、刺されて、誰にも手当をされずにバンギンは死んだ。殺った奴は消毒用アルコールを呷って死んだ。
チャルースは食い物を渡して、自分は喰わないで、最期、眼球まで喰われて無くなった。
アーリンは、ある時から腹痛を起こし、皮膚が爛れ、目が見えなくなって、最期はその辺の破落戸に腹を潰されて死んだ。
こんなの、理不尽だ。
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