If?:破落戸と少女の最後の悪夢25

 『復讐』

 それが俺達の共通した信念だった。

 が、俺達は以前の俺達とは違う。

 知識を得て、向上心を胸に抱き、力の使い方を学んだ。

 俺達が武器や魔法を使って殺戮による復讐を行っても、決して、彼奴らは報われない。

 悔しいが、昔の俺達に戻ってやり直す事は出来ない。


 今ならバンキンを傷付けない様に守る事が出来る。しかし、今更その術をアイツに使ってももう、意味は無い。守る相手はもう居ない。

 チャルースの口に否が応でも食い物を捻じ込み、ヤツ以上に食い物を探し当て、そしてヤツが撒く必要が無いくらいの食料をそこら中にバラ撒ける。

 今なら、アーリンの怪我だか呪いだか病気だかを……今となってはもう解らないが、それを癒す事が……出来なくとも、出来る方法を調べる事くらいなら出来た……。

 調べ、解法を探し出す術を知った。


 でも、もう無意味だ。

 『不可逆』

 死んだ命は泣こうが喚こうが暴れようが、もう戻って来る事は無い。

 暴れて、壊して、喚いて……………良い奴等は戻ってこないんだ………

 八つ当たりして、他を壊したら…………俺達は良い奴等を侮辱する事になる。

 無意味なんだ。

 どころか、下手をすれば、八つ当たりした奴等がバンキン、チャルース、アーリンみたいな良い奴………って事もあり得る。

 そうしたら、俺達が良い奴等を傷付け、それに怒った連中がまた復讐をして、復讐が復讐を呼び寄せる。

 だからと言って、人間は止まらない。

 幾ら知識を得ようと、幾ら世界が拡がろうと、それは変らない、否、変えられない。

 俺達が彼奴らの理不尽を怒らずに、誰が怒る?


 『提案ですが、復讐の方法を変えては如何ですか?』

 抑える……訳じゃ無い。

 抑えられない。

 しかし、その提案が俺達の復讐の方法を変えた。

 「貴方達が表で生きる。→その後、裏から表に人を呼ぶ。→最後は裏も表も無くなる…………と言うのは如何ですか?

 少し突拍子も無い発想かとも思いますが、とびっきりの復讐にはなります。

 何せ、貴方達を苦しめた差別と、貴方達の無念と、これからの未来全部に仕返しが出来るのですから。」

 「………………………乗ってみよう。」




 私達が出会って先ず初めに行った事は、勉強と拠点作り、そして、庇護者を探す事でした。

 徒党を組んでいるだけでは、私達は弱過ぎる。

 私も、街の手伝いを今までしてきましたが、それは父や母の存在あっての事だと、今更気付きました。

 信頼も信用も無い連中が、信頼を勝ち取る為には支えてくれる様な後ろ盾が必要なのです。


 裏社会の首領、『バドワール=ティック』

 後ろ盾の方として、皆さんから聞いた中の、最有力候補がその方でした。

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