If?:気まぐれで変わった破落戸達の最後の悪夢14

 現状を時系列順で整理します。


 私は先程まで、日が暮れる前まで大通りでマキナージの魔道具を探していました。

 しかし、見つからず、日が暮れる寸前まで手掛かりさえ無く、途方に暮れていた所、日中に出会った商人の方から魔道具を見付けたという朗報を頂き、裏通りを案内されていました。

 そして、その途中で顔に布を被せられて猿轡さるぐつわをされ、今現在、どこかに運ばれている所です。

 しかも、私を運んでいると思しき方は私を案内していた商人……だと思います。

 ただ、先程まで絶えず微笑み、親身になって下さっていた商人さんにしては、あまりにも言葉遣いが粗野で、語気も荒々しいもので、到底同じ人とは思えません。確証が無い点…と言うか、そうだとは思えないのです。


 『一体私は如何なっているのだろう?』

 それがその時の私の純粋な思いと考えでした。

 今考えると、それは恥じるべき、情けない浅慮であると考えます。


 「モモ、『モモモモモモ』モモモモモモモモ?(あの、『そういう事』とは何でしょうか?)」

 悪臭を我慢しながら私を運ぶ誰かに問いかけます。通じているでしょうか?

 「クククククク………カカ、クカクカクカクカ!マジかよそういう事かよ!箱入りにも程がンだろぉ!

 クカ、クカ、クカカカカカカカカカカカカカカ!」

 咳き込むような、声と言うよりも喉を鳴らすイビキの様な大爆笑。

 「………………………」

 途方に暮れていた私に気付いて運んでいる人は言いました。

 「あぁ…クク。

 面白いからよぉ、親切な俺こと愉快ファニー詐欺師プリテンダー・ディセンは間抜け面晒してるであろうお嬢様にお教え差し上げるよ。

 正に、カカ…大出血、サーーーーーービッス!

 お前はな、騙 さ  れ た ん だ よ !

 クッカクッカクッカ………クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ、クカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!!!」

 担がれて揺らされる体と、悪臭と、息も絶え絶えの笑い声。

 それと、

 「『騙された』……………?」

 それだけが私の今与えられている情報。

 「どういう事ですか?

 あの、あなたは……先程の親切な商人さんですよね?」

 私は騙されたのです。

 他人から虚偽の情報を与えられ、それを事実だと信じて自分が何か損をする事。

 それを誰かにされてしまったのです。

 「クククククククク……あぁ、自己紹介。

 俺は、愉快ファニー詐欺師プリテンダー・ディセン。

 ある時は表通りで雑貨を売る微笑み豊かな商人!ある時は酒場で出会った奴に一杯奢って話を盛り上げる愉快な男!ある時は落とし物の持ち主をワザワザ調べて届ける好青年!そしてある時は愉快な少女の探し物を見付けたと教えてあげる親切な商人さん!

 しかして、その、正体は………裏通りの愉快にして痛快にして誘拐な詐欺師、ファニーィィィィィィィ!プリテンダーァァァァァァァー……………ディッセエェェェン!

 今はマキナージの魔道具に釣られたアホなガキを誘拐している途中だよ。

 クッカカカカカカカカカカカカカカカ、カッカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ!」


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