If3?:○○○○○○○にさよならを6
手の平を真っ黒な扉に静かに付ける。
少しザラリとした感触と、湿った感触。
そんな感触を感じながら目を閉じ、自分の中に在る得体の知れない力を手に込める。
流れる様な
巧く形が出来やしないが、ある程度形が仕上がったそれを一瞬で放つ。
『
手に走る独特な衝撃、一瞬の空気の振動、その後手元の扉の感触が消えて無くなった。
ドアに人一人が辛うじて入れるだけの穴が開いた。
「………………大丈夫そう?」
「………あぁ、まぁな。」
『
地味で使い道が少ないが、こういう、なるべく破壊範囲が少ない方が好ましい場合は重宝する。
金庫壊したり、こういう中の状態が解らない場合は使えるのだが……コレ、泥棒用の魔法じゃね?
「で………………はぁ………………。」
中を覗いて予想通りだと考え、故に目にした事を後悔した。
「大丈夫、アーサー?」
「あー…駄目だな。完全に死んでる。生きてる訳がない。」
頭を抱えて断言する。
無論、俺は医者じゃない。
解剖医でもない。
預言者でも分析系統の魔法を憶えている訳でもなんでもない。
死体が本当に死んでいるか生きているかは脈でも見ない限り解らない…いや、脈も偽装されたらアウトだ。
でも、解るよ。
考える迄も無く解っちまう。
だって…炭になってもう肉なんてものが無い奴が、床が何で残っているのか解らない位に部屋が焼かれて机も本棚もベッドも…何も無くなってる部屋で、辛うじて目を凝らして見付けた黒い塊になった
生きてる訳無いだろうが!
「カモヤ、最後の一人。チェックしてくれ。」
ギリギリ覗き込んでいないカモヤを強引に扉から遠ざけ、塊に片手を突っ込んで改め、素早く確認。体に挟まっていたものを辛うじて引っ張り出して必死に声を振り絞る。
「え?でもちゃんと身元を………」
「消去法だ。構わない。」
無理にそのまま、辛うじて焼け残った階段までカモヤを押し戻す。
そこまで来てやっと、俺は息を吸えた。
「カハァッ!
アレをお前に見せたいとは思わない
ちゃんと参考になる物品も取った
生命活動なんてしていない もう良いだろう!?」
息を吸いこんで息も吐かぬ間に酸欠になった頭で考えた文章をぶちまけた。
「ぁ、あぁ。
解った。じゃぁ、それを確認して帰ろう。
俺達の仕事は最低限の調査だけだから、もう良いだろ?」
「有り難うカモヤ。
…………あぁ、間違いない。この手帳。」
部屋を確認した時、遺体に挟まっていた辛うじて形を保っていた何かを引っ張り出していた。
高温で茶色になり、中身は殆ど読めはしないが、名前は確認出来た。
「『シェリー=モリアーティー』。
死亡確認した。」
俺が手帳の名前を読み上げ、カモヤがリストの最後に印を入れた。
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