If3?:○○○○○○○にさよならを4

 「煤で変色してるけど、火事の熱で変形していない。で、鎖で八枚花弁の花の金属飾りを繋げた形。

 こりゃぁ、アンベルティーニ家のモノだな。あそこの紋章は確か八枚花弁の花で、鉱物採掘で権力を強めてた筈だ。」

 「アンベルティーニね……………有った。これだ。」

 カモヤが手に持ったリストに何かを書き込む。

 俺達の仕事は遺体の確認と回収の準備。

 損傷状態の酷いこの状況下で遺体をまじまじと見つめ、その装身具や遺体の特徴を分析して、予め貰った全校生徒及び教員リストと照らし合わせる事だ。


 真面目で誠実。幅広く物事を見てそつなくこなすカモヤが焼け焦げた建材から着実に遺体を見付け出す。

 我ながら物事を妙ちくりんな方向から見る俺ことアーサーは自由に観察して、本来は注目さえしない遺体の特徴を奇想天外な方向から見つけ出す。

 良くも悪くもこの手の変化球なテの仕事に強い………生憎。


 次の遺体に移る。

 遺体自体は何も持っていないが、その周辺に持ち物と思しき見慣れない物が大量に散乱していた。

 「これ………は、魔道具か。

 壊れてるみたいだが、市販に出てるものじゃない…筈。

 なぁ、カモヤ、これに見覚えあるか?」

 そう言って遺体の傍に落ちていた幾つかの煤だらけの道具を見せる。

 杖の様なもの、金属製の円筒、リング状の燃えていない木の細工等々、などなど、ナドナド…………。

 魔法の力を込めて意図的に特定の魔法を行使できる道具、魔道具は大量生産されている。が、明らかに用途不明なこれらを俺は見た事が無い。

 「うん?あぁ………見た事無い……かな?」

 じっと目を凝らして、悩みながらそう答える。

 「じゃ、市販品じゃ無いな。」

 断言した俺を見て少し困った様な、呆れた様な顔を見せる。

 「イヤイヤ、俺、そんなに市販品とかには詳しくないから、信頼し過ぎないで。

 もしかしたら市販の魔道具に在るかもしれないじゃない?」

 「いや、まぁ、その可能性はあるけどさ、俺、そういうの常識とか知らないし、逆にお前、周囲からの評価は良識ある常識人だし。

 ま、アテにするなら俺の知る限りトップクラス良い奴のカモヤだろ?」

 真意だ。本音だ。嘘偽りない気持ちだ。

 『当てにするな』・『俺だって間違う』とは言うが、それこそ、それを言ったら誰だって間違う。『最高神は誤ってテラオロント島を置いた(誰しも過ちは有るという意)』ってな。

 コイツのいい所は……

 「そう言うけどアーサー、俺、そんないい奴じゃないからね?」

 散々今の台詞を言っても天狗にならない所だ。

 「ま、じゃぁそういう事にしておこう。

 で、これが市販じゃない魔道具だとすれば、火事場で持ち出す様な貴重なモノか、はたまた魔道具に執着している人間って事になる。だとしたら…………………」


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