If3?:伝染~手遅れ~


 ミス=エムロード=メートスの容態とその周辺の状況。

 食堂で食事を口にした後、身体を痙攣させて、全身に発疹が出た後、呼吸困難を起こして気を失い、現在治療中。

 ミス=メイデイが治療を施しているが、未知の毒物故に治療は難航。

 同時に、学園の授業も一時休みに。


 厳戒態勢の最中起きた毒殺未遂。

 しかも、毒の種類は特定出来ていないが、起きたばかりの殺人に使われたものと症状が酷似。


 厳戒態勢。

 食堂の事件の後、即刻全生徒を自室にに戻し、外出は厳禁とされた。

 その間に教師が校舎内を全捜索。

 全員武装。部外者を発見した場合、周囲に知らせ、即刻拘束。

 『抵抗する様子や怪しい動きをした場合、武力行使も止む無しです。

 万一犯人でない者に誤って怪我を負わせても構いません。

 責任は、私が取ります。』

 ミス=フィアレディーからの一言。

 ただでさえ見えない犯人への苛立ちと恐怖が立ち込める最中、その一言はある種の敗北宣言であり、宣戦布告であった。

 学園全体に毒の様な緊張感が充満していく。




 食事時に毒殺未遂が起きれば、先ず食器や食事に毒が混入している事を疑う。

 無論、毒針の可能性も考慮して体に刺し傷が無いか如何か調べる……が、それは見付からない。

 スープ、穀類、温野菜、蒸し肉、食器…………何処に混入したかを調べる。

 しかし、決して毒は検出されない。

 在るべき危険物が無い。それは安堵ではなく不穏だ。


 部屋に軟禁された挙句、情報統制によって何が起きているか解らない不安。食事も強制的に中断させられ極度の空腹状態。食べた者は食べた者で毒の混入経路が解っていない現在、自分もなるかもしれない、毒を食べたかもしれないという恐慌状態に陥り、毒でなくとも偽薬効果プラシーボ(薬でないものを薬と偽る事で薬効が発生する現象、またはその逆に、薬を薬でないと偽る事で薬効が減少または見られなくなる現象)で動悸や息切れ、過呼吸、紅潮が起き、それは医者で無いと判断が難しい。そうでなくとも恐慌状態の人間を相手にするのは骨が折れる。


 武装した教師を始末した事実と、食事に毒が混入されていた可能性。

 そして、現在生徒は軟禁状態で疑似的な孤独。

 自習をせよとのお達しは有ったが、身は入らない。

 情報が無い中、恐怖と孤独は精神を蝕んでいく。




 武装した教師と生徒を殺したのは私だ。

 エムロード=メートスに毒を盛ったのは私だ。

 が、それ以上は何もしていない。

 無論、こうなる事は私の望んだ通りの結果。もうここまで来れば行き着く先は……………。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る