If2:事足りる能力


 『私は予知能力を持っている!』

 そんな事を言われた覚えがある。

 無論、エピソード記憶が削り取られている為に『以前そんな妄言を吐き掛けられた様な気がする。』と言う程度のものだが、私とその手の輩は相性が悪い事は解っている。

 予知能力が有ると言って自分を誇示するのは勝手だが、で驕り、調子に乗られても困る。



 〈人の末路の予知を可能にする方法〉

 先ず相手の末路の場所、時刻、その他詳細を宣言する。

 次に相手が『宣言した末路』に到る前に『別の末路』に到らぬ様に護衛を付けるor監禁する。

 最後に相手に予知した通りの場所、時刻、その他詳細に則した末路を迎えさせる。



 『相手が三日後に全身から血を撒き散らして死ぬ』と予言したら、三日間死なない様に気を使い、三日後に全身から血を撒き散らして死ぬ様な毒なり細菌なりウイルスを仕込めばいい。(無論、細菌やウイルスや毒が丁度その日に相手を絶命させる様に計算しなければならないがね。)


 簡単だろう?

 特殊な力なぞ必要無い。必要なのは計算と自分が殺人を行ったという動かぬ証拠を残さない完全犯罪実行能力のみ。

 誰もが解る能力。

 誰もが知る能力。

 誰もが出来る能力。

 予知なぞそれで事足りる。

 君は柔らかいパンを千切る程度の事で一々ナイフやノコギリを取り出すかね?

 否、指先で事足りる。十二分に。

 御大層に未来をある程度予知出来る程度で吼えるとは愉快奇快ここに極まれりだったよ。






 予知能力を嘯いていた輩の末路かね?

 あぁ、憶えてはいないが、ロクな死に方はしなかったと思うよ。

 あぁ、何の話をしたかったかという事かね?

 今目の前に転がっている三人についての話だとも。



 何が起こったかと言えば、剣術の授業中に一人が私を木剣の的にしようと狙って来たので返り討ちにした。

 次に、それを見ていた別の輩が不意打ちを喰らわせようとして失敗。

 高名な騎士の家の出らしく、著しくプライドを傷つけられたとムキになって手合わせを要求してきた。

 これもまた返り討ち。

 何度も何度も『自分は未だ本気ではない』アピールをして来たので少し強めに返り討ちにしたところ、『身分の違い云々……』『身の程云々………』と先程まで私が攻撃されている事を黙認していた講師がしゃしゃり出て来て、『模擬戦をする』と言い出した。

 最初は純粋な剣術で圧倒。すると『模擬戦は実戦同様で無くてはならない!』と言って魔法を使い始めた。

 サンプルとして魔法を使う様を観察しようと見ていたが、倍速で直線的に動くだけで見るべきものを見出せないのでこれも返り討ちにした。



 そうして、目の前で三人が転がっていた。

 この程度、意味記憶だけでも、たとえ相手が三人であっても、こちらが丸腰で始めても相手に出来る。

 何せ、相手の動きが単純過ぎて次の動きが読める。

 故に、こちらから動きを仕掛けて相手を望む方向へ誘導。そうしてその動きに対するカウンターで反撃すれば事足りてしまうのだ。

 誰もが解る能力。

 誰もが知る能力。

 誰もが出来る能力。

 素人剣術を返り討ちにする程度ならそれで事足りる。








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