恐怖の淑女の一喝


 そんな訳で、彼女らはすごすご退散……………………………………

 「待って下さい!確かに、私達がやりました!

 あのモリアーティーを人質にする様に仕向けました!ですが、だから何だというのですか!

 淑女の為の学園。それがこのアールブルー学園!しかし、あの女は違う。

 あんな下賤なモノがこの学園に居る事を許容して良いのでしょうか?

 アのようなどこの馬の骨とも知れない汚らわしいモノを、この高貴な者の集まる聖域に土足で踏み入れさせて良いのですか?

 私は淑女として許せなかった!あんなのがこの学園に入り穢す事が許せなかった、だから排除した!これは正義です!義勇によって行われた聖なる行いです!この学園に害を為すモノを奮い立って我々が成敗しようとしただけです!

 我々が何故この場から去れなければならないのですか⁉私達は……」

 往生際と諦めの悪い……又は諦めた者の最後の悪足掻き……………とでも言うべきものだろうか、それが淑女の圧から一瞬だけ、小娘を解放させた。

 喰らい付き、自分は劣っていない、自分は優れた者であると吼える……………………が、その主張が最後まで響き渡る事は無かった。


 パシィン!


 乾いた音が部屋に響き渡る。

 同時に吼えていた小娘が吹き飛び、地面に崩れ落ちる。

 「誰が発言を許可しましたか?

 あなた達は誰ですか?

 あなた達はこの学園の何ですか?

 ここはアールブルー学園。秩序有る、高貴なる者の有るべき聖域です。」

 鞭を持った淑女が、殺意染みた気迫を以て地面にくずおれた小娘を、背筋を地面と垂直な状態のまま、睨みつける。

 他の4人はそれを見て微動だにしない……………否、微動だに出来ない。

 恐怖で石像の様に固まってしまっていた。

 「に教えてあげましょう。

 この学園は高貴な者の為の学園です。

 淑女が、淑女として、より淑女である為の、研鑽の為の、侵すべからざる聖域です。

 そして、この場合の『高貴』・『淑女』は決して、煌びやかな衣服に身を包み、マナーと所作と中身の無い見え透いたお世辞の言葉だけを口にする、財産を持っているだけの者ではありません。

 その身と心に揺るぎ無き矜持を持ち、優雅で、力強く、弱き者に手を差し伸べ、叡智と教養に溢れて他者を敬う事の出来る者。真の美しさと強さを兼ね備えた者。

 それが淑女です。

 あなた達の様に見かけだけを取り繕った者を淑女とは呼ばず、そこに正義は無く、秩序も無い。

 義勇だの正義だの、滑稽な言葉で取り繕うのは見苦しいですよ。

 あなた達にこの学園を……淑女を語る資格は御座いません。

 今直ぐ。この学園から出て行きなさい。

 これは、アールブルー学園の命令です!」

 それ以上の反論は無かった。

 口答えはそのまま死に繋がると感じたらしい。



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