恐怖の淑女は背筋を正したまま、何時もの様に階段を上る
今回の一連の件で大きな変化が幾つか起きた。(と、言っても、我々の今後に大きく関わる様な大事では無いが。)
一つはこの件のそもそもの原因になった不正に関わっていた連中の家の小娘共がまとめてこの学園から追い出された事。
不正に直接関係は無いが、シェリー君を人質にした事でその他の連中に隙を見せてこれは起きた。
全く、最近この学園の退学者数が多い気がするね。一体何が起こっているのだろうか?
もう一つは学園のセキュリティーの見直し。
表向き
これは大問題だ。
完璧な警備は存在しない。これは前に言った金庫同様に、『扉が開く事』・『中に入る事』が前提で組み上がっている構造故に侵入方法が一つ以上存在してしまうからだ。
特にこの学園は扉が有り、窓も有り、敷地の内外は地続きで柵が在るばかり。
簡単に外部から侵入する事が出来る構造なのだから、入れない訳が無い。
が、それで納得する訳にはいかない。
更に、学長が勝手に、かつ秘密裏に地下ダンジョンを造っていた事でこの学園の敷地内に他にも同じような仕掛けがある可能性と警備の致命的エラーを考えて一斉捜索なんて事まで起きた。
まぁ、後々不正が小出しで出るよりは一度に不正や厄介事を始末したいという考えだ。
最後に一つ。上記の事を行った人間についてだ。
本来この手の業務は学園の長。学長がやるべき事だが、学長は事実上クビになってMMが身柄を抑えている。あの三頭身は永遠に学長としての発言力も権利も喪った。
では、学長は誰になったか?
何度も言うが、ここは邪智謀略と人間の果てしない欲望、それに醜いマウントの取り合いが地上の空気の如く、海中の海水の如く当り前に、探すまでも無く存在する場所だ。
学長というこの学園の事実上のボスを決める際に各方面から圧力が有るのは当然だろう?揉めたさ。
学校やその他閉鎖的空間では外の常識は通用しない。貴族と一学園の学長の力関係は外では圧倒的に貴族に軍配が上がっても、学園内と言う異常空間ではその立場が逆転するなんて事が起こる。
力有る貴族も、無い貴族も、その他おこぼれに預かろうとするハイエナも、学長に『自分にとって都合の良い人間』を推した。
結果、足並みは揃わない。
自分の都合の良い人間を据えるのは連中には困難だ。
では、質問だ。欲に塗れた醜い人間が自分にとって都合の良い事が起こせない場合、次に何をすると思うかね?
地団太を踏む?誰かに媚びる?協力する?
違うよ。人間の醜さを舐めないで貰おうかな?
正解は、自分にとって都合の良い事が起こらない場合、死なば諸共で相手にとって都合の良い事が起こらない様に全力を尽くす。
この場合、自分にとって都合が悪く、相手にとっても都合の悪い人間。つまり、良くも悪くも学園内の人間に平等で、容赦無く、自分にとって最も厄ネタとなる人物。
「前学長が諸事情でこの学園を去った為、新学園長に就任しました。フィアレディーです。
この学園が淑女に相応しき、アールブルー学園として在る様にこの身、この精神、この魂の全てを賭して精進して行きますので、そのつもりで。」
策略と謀略の末、全ての欲深な人間は新学長にミス=フィアレディーを推薦。全員が頭を抱えつつこの学園の新たな長が決まった。
人間は全く以て愚かしい。
あろうことが全ての人間に都合の悪い人間を……最も不正を働き辛い恐るべき淑女に学園の秩序を委ねた……。
本末転倒とはこのことだ!ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!
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