同盟脱出計画2

 学園を覆う連中に対して不正の証拠を掲げるのであれば、それは告発としては握り潰されない方法としては無難である。

 下手なタイミングと場所で告発すれば、公的機関であっても今の我々の社会的立場では容易く潰される。

 対して、貴族の群れの中でそれを投下すれば無かったことには出来ない。

 が、それを行った瞬間、我々は自身の優位性を全て捨てて死にに行く事になる。

 告発で貴族5家を他の連中に始末させられても、 『不正の証拠を持つ』という我々の唯一の優位性が無くなった途端、我々は唯の立て籠もり犯。娘に害を為した虫でしかない。

 壮絶に殺される。

 見せしめで殺す時の人の想像力とインスピレーションを知っているかね?

 そこに人類の叡智の純悪を見出せるくらいには悍ましい。

 無論、そんな事はしないし、させんよ。

 「相手は我々自体には興味が有りませんし、価値も見出していません。

 大事なのは我々が不正の証拠を持ち、それを自分と同等かそれ以上の力を持った輩に渡すかもしれないという危険性を持っている状態を維持する事です。

 我々は包囲網を突破。追跡して来るであろう人を躱し、逃げ延びねばなりません。」

 「それ……無理じゃ無いかにー?

 権力も武力も無いこのメンバーじゃ出る事さえ出来ないんじゃ無いかにー?」

 もっともな意見が飛んでくる。

 あぁ、普通に考えて無理だろう。

 正面から挑めば数の暴力、目を盗もうにも多過ぎて盗み切れず、生半可な策では権力の前に潰されるのみ。

 しかし、ここで諦めるのは愚作。

 それが証左にシェリー君の眼は死んでいない。

 どころか、隙を突き、策を巡らせ、一閃せしめようという光が眼の奥に在る。

 「えぇ、力無き者が幾ら足掻いても如何しようも有りません。

 ただ、力無き者が力有る者を力で動けなくする事くらい、考えれば如何とでも成るのですよ?」

 「ぬぅ、それは、如何様にすれば成る?」

 「簡単です。

 力無き我々が虎の子を持っているから意味が無いのであって、力有る我々が虎の子を持てば相手は動くことは出来ません。」

 「ねぇねぇ、一体何するの?」

 「簡単です。

 我々は今から……いえ、この場所に来る前からだった事にします。」




 シェリー君の筋書きはこうだ。

 先ず、立て籠もり犯も、傭兵も、端から学長の不正調査の為のエージェントだった事にする。

 立て籠もり犯役が先行隊として学園内から人を追い出して、万一に備えて生徒達の安全の確保。

 後から傭兵が入って立て籠もり犯を撃退する…様に見せかけて援軍として侵入。

 その後学長の不正の証拠を探し出し、本人の身柄を確保。

 そうして今、ここに至っている………というものだ。

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