教授 絶叫する

 単純だろう?

 学園地下に学園側の手引きも無しにこの規模の構造物を作るのは困難。が、学園のトップならそんな問題は問題では無い。バレるもへったくれも無いのだから。

 貴族5つを相手にマウントを取れる相手はそうは居ない。が、自分の娘を王族にしてくれる(と思い込んでいる)相手に対して貴族は強くは出られない。違うかね?

 新築した学園に素人を忍び込ませるのは至難?警備をトップが予めザルにしておけばそんな事は些事。

 そうすれば簡単に盗ませる事が出来る。

 で、盗ませた後でそいつ等が持っている宝を強奪。盗んだ輩を丸ごと始末。

 爆発物でも使って始末すれば、宝諸共吹き飛んで無くなった事に出来る。

 使う連中はそこらで借金でも背負った事にして首を回らなくした素人で良い。使い捨てで良いのだから。

 爆発物を使う迄の筋書きを如何するか?

 傭兵でも雇ってそいつ等と相討ちという事にすれば良い。


 で、今。

 三頭身の学長は右手に小型の銃の様な物を手にして、そこから鋼線が伸びて狙撃手に繋がっていた。

 痙攣、気絶。

 可能性は毒と電気。

 が、毒弾ならば鋼線は必要無い。鋼線の中に毒を流して注入する手間と切断のリスクを考えると弾丸を撃ちこめば毒弾は事足りる。電気だな。

 電気ショックによる一時的な気絶。非殺傷兵器としては面倒が無い。ただ、火傷の痕が残る事と絶縁体に弱いという欠点は在る。

 で、問題は左手で持っているモノだ。

 スーツケース。

 ただし、階段を引き摺って持って来た時の音。それが問題だ。


 ゴロゴロゴロゴロ

 ガタッ ゴトッ!

 明らかに中身が重い。

 武装では無い。武器であるなら、活躍の場が有りながら今の所使っていないのは不自然。なら、花火だ。

 「学長!コレはどういう事ですか?

 学園地下に不正と他者の財を集めて何をしているんですか⁉

 教える立場に有る者が不正を学び舎の下で行うだなんて恥を知りなさい!

 挙句に自分の盗みを他人に擦り付けて殺そう等!言語道断です!」

 割と昂るシェリー君。感情こそ表に出ているものの、迂闊に飛び掛かる様なマネをしないあたり、冷静さは在る。

 当然だろう。狙撃手に庇われなければ今頃シェリー君も感電の巻き添えだった。

 相手にそんな風に庇われて、失態を晒している状態で更に浅慮な真似は出来ないな。

 「フッセぇええええイ!?

 バァッっっッッカーな事を!

 金ヲアッツメーテ何がワルイッ!?悪くないッ!無論!何もォー……問題無イ!

 汚ラッシィーやっからのあぶくが私ノミヲカッザーつて美しく生るのウデッス!コウエイノキワミデワ!?」

 飽きたな……この手の自信過剰な価値観は。

 三頭身が弾んで飛び跳ねて、気絶した狙撃手を踏みつける。

 「テェメッ!ジャリスさんになんて事しやがる!」

 若兵が頭に血を昇らせて掴みかかろうとして

 ジャキッ!

 動けなくなった。

 狙撃手が持っていた銃モドキを三頭身が若兵に突き付けたからだ。

 「ここまで深くモグラーレルットワ思いませんでしたが………計画は変わりません。ア・ナ・タ・タ・チ・全・員・死・ん・で・お・仕・舞Happy End・で・す!」

 立て籠もり犯4人+若兵1人の5人が竦む。

 三頭身が勝ち誇った顔で銃口を向ける。

 「アータータッチーの持っちー物で死ねば問題無っし!」

 狙う先は若兵。

 距離は5m32㎝29㎜。銃の反動で狙いがブレても当りはする。

 弾丸の性質上、弾が暴発する事は無いし、傭兵がそんな間抜けな事をする訳が無い。

 ただし、ここで朗報。この銃、連射性能はあまり無い。

 上で連射したのはひとえにそこで寝ている男の技術故に出来た事だろう。

 一人殺した所で他の連中から袋叩き。

 飛び道具使って、一対多で、狭い室内。

 1人死んでこちらの勝ちだ。





 「死 ッ ネ ッ !」

 ボズン!

 水蒸気と軽い炸裂音、反動で三頭身が吹き飛ぶ。

 若兵は反応出来ない。


 『強度強化』『肉体強化』


 反応したのはシェリー君だけだった。

 撃ち込まれる弾丸の軌道を予測し、若兵と弾丸の間に入る。

 この至近距離なら重力や風による弾道の精密予測は必要無い。

 そして華麗に弾丸を









 頭が撃たれて……止めた!

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 何

 し

 て

 い

 る

 の

 ⁉

 シ

  ェ

 リ

 |

 君

 ⁉

 弾丸を体で受けたシェリー君が地面に崩れ落ちた。



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