全貌は三頭身だった。



 全貌。

 6つの勢力が学園地下に宝の金庫を作って宝を入れる。

 皆が協力体制。ただし、協力相手を信頼していない『無信頼協力体制』。

 全員が互いに不干渉で悪事を働かない様に協定を結んでいた。

 で、問題。

 6勢力も強権持ちの金の亡者が居れば、足並みは原則揃わない。

 それをどうして、この程度とはいえ、調停出来たか。

 6勢力の内、1つだけ他5つより頭一つ何か強さを持っている。

 何か?

 あぁ、あの輩なら…それもあり得る。


 そう、今、我々の置かれている状況は…

 ・学園を取り囲む令嬢のパピーとマミーの引き連れた部下に娘を怖がらせた落とし前とばかりに命を狙われている。

 ・不正の証拠を掴まれて危機的状況な5勢力から口封じとばかりに命を狙われている。

 ・調停役にしてこの連中をここに招き入れた一勢力が我々を『不正な金を盗み取った犯人』に仕立て上げ、口封じとばかりに命を狙っている。



 傭兵も立て籠もり犯もシェリー君も、知って欲しくない事を知った連中は平等に始末しに行く。

 ここに居る人間はある意味平等だ。ロクでも無い連中に命を狙われているという意味で……な。


 「ここに居る人間は一蓮托生。

 ここを無事抜け出すにはここでそれを使って人手と頭脳を減らすより、立て籠もり犯+傭兵の貴方達、そして私の総力で打破すべきかと思いますが、如何でしょう?」

 若い傭兵の拘束をすり抜け、手錠をすり抜け、何事もない様に銃口に歩いて行く。

 その場にいた全員が、その行動が自然過ぎるが故に誰も動けない。

 そうして次に何をするかと思えば銃口を掴み、自身の心臓に突きつけさせた。

 「時間はありません。さぁ、速やかに決断を。」

 狙撃手は眼前に恐怖の対象を見出していた。





 「サァァァあああッせませンノッ!」

 ポンッ

 素っ頓狂なオペラかミュージカルの女優の声が響き、スパークリングワインのコルクが弾けた様な音がした。

 「!」

 狙撃手が恐怖を映した眼から傭兵の眼に代わり、シェリー君を強く突き飛ばす。

 次の瞬間、狙撃手の体がビクッと痙攣した。

 突き飛ばされたシェリー君はと言えば軽く数m後ろに後退したものの、受け身を取って直ぐに立ちあがる。



 「まぁぁママアアアママママッママアアア!

 マッッッッっッッッたく!面倒で使エ無いっ!ヒート達ですねっ!」

 痙攣した狙撃手がぐらりと地面に吸い寄せられるように崩れ、その背中に妙なモノがくっ付いている事に気付く。

 背中に小さな分銅の様な物が付き、そこから伸びる鋼線の様な物が上へ繋がる階段の暗闇へと伸びている事に気付く。

 「別に、露払イだけしてれば良いものを、余計な事をして金品を汚い手で触らないで。」

 鋼線の先には珍妙な物体……もとい生物が居た。

 三頭身有るか無いかの大木の幹の様な体に派手なピンクのドレスを身に纏い、指には金色の大きな宝石が嵌め込まれた指輪が幾つもギラギラと輝き、何処で買ったのか解らない紫色の眼鏡を掛けていた。

 紅髪が逆立った様に巻かれ、唇は不自然に大きく、顎が三重に弛んでいた。


 さぁ、6人目の調停者にして5つの家を裏切った裏切り者、民間人を立て籠もり犯に仕立て上げて、傭兵を雇い、現在進行形で我々を舞台装置に仕立て上げようとしている、面倒事を積み重ねたが遂に登場だ。



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