お宝探索を終えてしまおう。
全5箇所。
鉄格子の中に有る箱の中身を検分し終えた結果、以下の物が有るという事が解った。
・大きなルビー
・魔力結晶
・小粒だが品質の良いダイヤモンド97粒
・アメジストをあしらった若干美術的価値の有る装飾品
・紫色の眼の龍が彫り込まれた指輪
・インクで印が付けられた山岳地帯の地図
・鉱物(軽量で金属を含んでいるものの、構成元素は不明。私の知識に無い、または世間に出回っていないこの世界特有の金属と思われる。)
・土地や金山の権利書
・継ぎ目の無い金属製のキューブ
・インク瓶擬きに入り、封印がされた液体。
・植物製の質の粗い紙
・乾燥した生物の死骸の一部。要はミイラ。
「全く、ダンジョンを作っておきながらこれっぽっちとは泣けてくる。」
「……あのー………教授?」
「私としては人の頭蓋程ある宝石や革新的過ぎて持て余した発明や薬品の類、大っぴらには出来ない物のレシピ、そして…少しばかりこの国がひっくり返る様な不祥事の証拠くらいは有っても良いだろうに!なんと略奪し甲斐の無い。」
「あの、教授?」
「ん?何かね?」
「強盗という概念に対する教授の戦慄する様な価値観は後程追求するとして、そもそもこの数と量をどうやって運び出す気ですか?」
箱の内容物の大半は、然程大きくも重くもないシロモノ。運搬に問題は無い。
ただし、それは普通に教授のおつかいで運ぶ時の基準であり、周囲を囲まれた状態で持っていくには難易度が上がる。
「箱の中身だけを取り出して幾つかに分けて袋詰めすれば良い。5人で持てば、然程かさばることも無いし、余力が有る二人に怪我人を運ばせれば事足りる。」
「あ………そういう事ですか。」
何かを察した様に黙り込む。
「皆さん、お願いが有ります。」
「ナァ?何をすればいい?」
長身痩身がステップを止める。
「全く、強盗の最中だと言うのに…緊張感を持ってほしいものだ。」
「その言葉を、先程まで盗む物を査定して『これっぽっち』呼ばわりしていた方にそっくりお返しいたします。」
「おや、誰かね?その愉快な紳士は。
さぞ私と気の合う智的な人物と見た。」
「えぇ、でしょうね、かなり邪智的な方ですもの。」
シェリー君が意味深な視線を向けて来る。
これは一体どういう事かね?
「これを持って上に居れば良いんだナァ。」
長身痩身が上を指してそう言った。
肩には何かが入った袋を背負っている。
「はい。学長室内で…とも考えましたが、意図せず誰かと遭遇した場合、怪我人と金品の類を持っていては相手になりません。
上のフロアで怪我をした彼を回収。後に脱出準備を。
私は、手掛かりを残していないかを確認した後で行きますので、待っていて下さい。」
「解ったにー。」「ぬぅ、だが、手伝いは……」「流石に何もせずにというのは…」
「怪我人が優先です。
ここから逃亡する為の算段を立てるにも『見捨てる』以外の選択肢においては誰が肩を貸すか、または背負うか等が決まっていないとそもそも話になりません。
彼を、見捨てる気が有るのでしたらそれでも良いですよ?」
少し脅しの効いた科白に4人が凍り付き、そのままおずおずと肩に金品の入った袋を背負いながら上階へと去っていった。
カツカツカツカツカツカツカツタッタッタッタッタ…………
階段を上る音が遠ざかっていく。
「では、我々も証拠隠滅とやらに勤しむとしようか。」
シェリー君が次にしそうも無い事を言ってみる。
「えぇ、では、お宝探索を再開………いえ、終わらせましょう。」
シェリー君はそう言って鉄格子へと向かっていった。
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