賭け


 「とっとと崩れろよナァ!」

 「しっつこいんだにー!」

 「ぬぅ……これで仕舞にして欲しいものだ。」

 「ねぇねぇねぇ。打開策誰か無い?」

 「うーーん……厳しいのー。」

 5人は苦戦していた。

 最初のゴーレムと今のゴーレムに強さという意味での違いは無い。

 しかし、人間の方は違う。

 一回一回は掠り傷でも、それは蓄積されて大きな傷になる。


 こんな話を知っているかね?

 『とある女は男と結婚した。しかし、そこに愛は無く、女は男と別れたかった。

 しかし、男はそれに対して首を振らない。世間体を気にして離婚はしないと言う。その癖に不倫をして外に女を作っていた。

 女はそんな日々に嫌気がさして、男の食事に2つ。あるモノを入れた。

 毒?単体では無害だが、一緒に食べると人間を殺す、食べ合わせの悪いシロモノ?精力剤?

 違う違う。

 女が入れたのはいつもより多めの砂糖と塩だった。

 自分の食事と一緒に作り、男の皿にだけ、一つまみ砂糖と塩を入れた。

 男は毎日三食。女の食事を食べていた。

 最初は一つまみ。

 2日目は二つまみ。

 3日目は三つまみ。

 これを毎日続け、男はある日、不倫している女の部屋のベッドで、で死んだ。

 死因は病死。不自然な点は無い。

 女は男に掛けた生命保険を受け取り、疑われる事無く自由と金を手に入れたとさ。


 何を言いたいかと言えば、『塵が積もって最後には全てを喪う。』という事だ。

 相手は痛覚と疲労無きゴーレムで、壊しても直ぐに元通りに再生する。

 こちらは痛覚も有れば疲労もある。傷を負って直ぐに傷が塞がる程人間離れもしていない。

 これが、この再生型ゴーレムの恐ろしい点だと言えよう。

 しかし、再生するにはシェリー君に言った様に、エネルギーが必要である。

 そして、もし、私ならばゴーレムの中に再生の為のエネルギーとエネルギーのジェネレーターは取り付けない。

 そこまで考えが巡れば、後はゴーレムのとある場面を注意深く見れば謎は解ける。

 さぁ…シェリー君は次にどうするかね?

 「皆さん!一度散開して個々ゴーレムを撃破して見て下さい!」

 次の一手は戦力の分散だった。

 「バラバラに動いて倒すだけで良いのかナァ?」

 「戦力の分散ってのは………危険じゃ無いが…このままだとジリ貧だしにー。」

 「ヌゥ………………それは、考え合っての事か?」

 「ねぇねぇねぇ、この子は無駄な事とか無意味な事はさっきからしてないし、信じてみない?」

 「うーん……賭けだが、賭ける価値の有る博打じゃのー………乗った!」


 5人は意を決して広間の壁際へと散開していった。

 シェリー君は広間の中央で全方位から迫るゴーレムを順々に破壊し始めた。

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