一撃

 剣が、斧が、棍が、杖が、拳が、各々が各々の全力を以て目の前に迫るゴーレムを打ち砕いていく。

 シェリー君も全方位からやってくるゴーレムを打ち砕く。

 『身体強化』『気流操作』『強度強化』

 背後から迫るゴーレムに気付き、筋力を増幅して勢い良く肘鉄を放つ。同時に掌から風を噴出、肘の強度い上げて威力を上げる。

 バキャン!

 先ずは一体。しかし同時に前方から迫る石の拳。

 肘を後ろに振り抜いたばかりで隙だらけ。

 しかし、ウチのシェリー君は単純な動きしか出来ない木偶デク人形風情に討ち取られる様な、そう簡単な教え子ではない。

 鍛え方が違う。

 『強度強化』

 振り抜いた腕の筋繊維と骨、更に関節を強化する。

 『身体強化』・『気流操作』

 頑丈になった筋繊維、骨、関節。つまりは腕を、肘のジェット噴射と膂力で前に突き出す。

本来ならば腕が砕ける様な無理矢理な動きだが、あらかじめ強化した腕はその動きを可能にした。

 バキッ

 十全とまでは言わないが、打ち砕く火力は十分。

 そんなこんなで2体を砕く隙に左右から挟み撃ちを仕掛けられる。

『身体強化』

 フワリと跳び上がり、石同士がぶつかり合って砕け散る。

 天井ギリギリまで飛び上がったシェリー君は戦況把握の後、

 『強度強化』『気流操作』

 足を強化した後、重力による落下に風を追加して威力を上げ、真下に来たゴーレムに踏みつけを御見舞いした。

 バキャン!

 石人形が踏み砕かれた。

 カラカラカラカラカラパラパラカラカラパラカラカラカラカラカラ………

 ゴーレムの全身が頭から見事に砕け散り、周囲の石畳に細かな破片が広がる。

 明らかなオーバーキルだった。

 これでシェリー君が倒したのは全部で5体。残り20体を5人が相手。

 で、その5人は如何かと言えば。


 「こっちは終わった。助けは……必要無い様だナァ。」

 「これで、終わりにして欲しいもんだにー。」

 「ぬぅ………この作戦。一体何の意味が有ったのだ?」

 「ねぇねぇねぇ、これって何がしたかったの?」

 「説明、頼んでも良いかのー?」

 そういってこちらに5方向から近付いてくる。

 「皆さん、少し、待って下さい。動かないで。

 !」

 その一言で5人が固まる。

 「何を」「言って」「いる」「んだ」「?」

 カラカラカラ………

 足元で瓦礫がカタカタと音を立て始めた。

 『身体強化』

 シェリー君は再度跳躍する。

 天井ギリギリまで跳び上がり、広間全体を俯瞰出来るようになる。

 『地形操作』

 天井に触れると、石で出来た天井に即席の持ち手を作り、それにぶら下がって辺りを見渡す。

 カラカラカラガラガラガラガラガラ………………

 ゴーレムが再度修復していく。

 足元から順々に積み上がっていく。しかし、俯瞰すると解るが、その積み上がり方に少しおかしな点が見られるのだ。

 足元から順々なのは共通だが、先ず、ゴーレムごとに修復スピードが違う。

 シェリー君が倒したゴーレムは今、下半身が修復し終わっているが、他の5人が倒したゴーレムは未だ下半身の修復最中だ。

 破壊の仕方の違い?それは無い。

そして、足元から順々に積み上がるが、大半のゴーレムが、人間で言う踵やアキレス腱から修復し、爪先や脛が修復していく。

 何を言いたいか?

 修復は背中から成されていく。そして、修復速度は広間中央から少し離れた一点を中心として、そこからの距離と修復速度が比例していた。

 そこは丁度、シェリー君が踏み砕いたゴーレムの破片が転がった時に他と少しだけ違う音がした箇所でもあった。

 「見つけました!」

 そう言って持ち手を掴みながら器用に天井に足を着け、

 『身体強化』『強風』『強度強化』

 その一点目掛けて隕石の如く突撃した!


 ドーン!


 広間に爆裂音が響き渡った。

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