6~7陣にかけて

 『冷静に燃えている。』それは確かに真実だ。

 しかし、それでも今、シェリー君は何時も程の慧眼ではない。

 もし、今のシェリー君が何時もの様な観察眼を持っていたら、6回もゴーレムを砕く事無く、今頃25体の石人形は物言わぬ瓦礫になっていた。

 しかし、7回目のゴーレムの進撃は起こる。

 何故か?目の前の状況を打破するだけで、シェリー君は根本的解決には近付いていないからだ。

 シェリー君は今、何時も以上に神経をすり減らして闘っている。

 それは何時も以上に相手からの攻撃に対して過敏になっている。という事だ。

 理由?立て籠もり犯を庇っているからさ!

 考えても見たまえ。今しがた、一撃でゴーレムの半分を壊滅したあの行動。

 あれは瞬時に全身の筋組織を限界まで強化し、生身であれば最悪吹き飛んで大怪我をする風を肘から噴射し、最低限必要な腕の関節と骨だけを強化し、後は相手にぶつかる部分だけを限界まで強化した、いわば半自爆技。継戦には不向きなモノである。

 シェリー君一人なら確実に不要な行動だった。

 しかし、折れかけていた5人の心を持ち直させる為には必須の行動でもあった。

 まぁ、つまり、人手は増えたが、それ故にシェリー君はそちらに注意を向けてしまった事で観察力が低下している。

 このまま行けば確実にシェリー君は5人とこの石棺で人生を終える事になる。

 では、私が出張るか?

 とんでもない。

 確かに、最近出番が本当に無くて迷宮の二・三、都市の裏の組織の一・二(ダース)を壊滅させたいのはやまやまだが、私は教授。

 教え授ける事が私の本懐。直接の手出しは原則しない。

 そう、『』の『』出しはしない。

 間接的口出しはするさ。

 「ア―、シェリー君?」

 「何でしょうか?教授。」

 瓦礫に警戒を強めながらシェリー君は応える。

 「エネルギー保存の法則というものが有ってね。

 何かを成す為にはどこかからその為のエネルギーを引っ張って来なければならないというものだ。」

 「はい……?」

 「ゴーレムの修復にはエネルギーが必要だ。

 そして、修復が今まさになされているならば、どこからかエネルギーは消費されている。エネルギーは供給されている。」

 「つまり………エネルギーの発生源を叩けば良いと?」

 「あぁ。」

 「それは解ってはいるのですが、それは一体何処に…………。」

 まぁ、冷静に観察しなければ解るまい。

 「冷静に観察したまえ。

 ゴーレムは一体どんな動きをしているか?どんな特性、特徴が有るか?

 その思考を全てのの時も行ってみたまえ。」

 「……………解りました。」

 そうこうしている内に、元ゴーレム、現瓦礫の方に動きが有った。

 ガガ ゴゴゴゴゴ…………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 瓦礫が何かの目的の為に動き出す。

 どんどん瓦礫が積み上がっていき、砕かれた頭が最後に繋がる。


 「さぁ、第7陣、始まりだ!」

 ゴーレムがゆっくりとこちらに進んできた。

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