石畳を叩いて渡るも…
シェリー君筆頭に大広間に足を踏み入れていく……その前に。
カンッ カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ…………
袖口の糸付き石を、前方の石畳の地面にシェリー君が転がすように投げる。
音はあまり響かずにそのまま地面を転がって糸を緩く張る様にして2mくらいの所で止まった。
「罠の類は無さそう……………ですね…………。」
他の五人にその場で止まる様に合図し、一人で石を転がした部分の地面を慎重に歩いて無事を確認する。
糸を強く引き、石を回収しながら、シェリー君が全方位への警戒を継続しつつゆっくり歩き出す。
「どうぞ、念の為に私の歩いた部分の石畳を歩いて来て下さい。」
カンッ カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ………
石を転がした場所を歩きながら再度石を前に転がすように投げる。
「嬢ちゃんは何でさっきから石を投げてるの……「私は『ジョウチャン』では無く、『シェリー=モリアーティー』です。」
シェリー君が長身痩身の言葉を睨みながら遮った。
「モリアーティー嬢ちゃんは何で石を投げてるのかナァ?」
気後れしながら再度長身痩身は再度シェリー君に問い掛ける。
「そりゃ簡単な話だのー。」
「ヌゥ…罠を探っている……のではないか?」
「『罠は無さそう』って、言ってたしにー。」
他の三人が代わりにその疑問に答えた。
「はい。安直で単純な方法では有りますが、これで前方の床の罠の有無を探っています。」
「ねぇねぇねぇ、どうやって罠を探してるの?その石に何か仕掛けが有るの?」
「いえ、これには何の細工も施されていないただの石です。
探し方は…簡単な話なのですが…石を転がした時の音の違いで探しています。
もし、石畳の全体に罠が仕掛けられて無く、一部のみに落とし穴や毒矢や吊り天井、その他何かの仕掛けが施されているのであれば…………表面を叩いた時の音に僅かな違いが出る筈です。
更に、もし、仕掛けの感度が良い場合や重量以外に反応する場合の罠の場合、石が罠を先に作動させてくれる可能性も若干ながら有ります。」
カンッ カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ………
石を転がしながら歩く。
「………………アールブルー学園ってのは、そんなダンジョンに潜る斥候みたいな技まで教えるのかのー……末恐ろしい場所に来たものじゃのー……。」
当然、ここまでやれば勘付くのは当然か。
「いえ、これは以前に出会った方から教わったものです。
何かの役に立つかもと思って覚えていたのが役に立ちました。」
嘘は吐いていない。
以前出会った私から教えているから嘘ではない。
こんな事も有ろうが無かろうがと思って、その手の罠への対策はシェリー君に叩き込んである。
今のシェリー君に傷を付けたければ建物一つ諸共始末する気で挑まねば話にも成らない。
「さぁ、ここまでは順調。しかし、この先どうなるかね?」
石を投げながら歩き、大広間から左側に伸びる通路へ進む一行。
歩みはそれなりに遅いが順調………に見える。が、残念ながら、もう既に罠は作動し始めている様だ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
大広間から伸びる通路が塞がれた。
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