鞭の音

「貴女方にはほとほと呆れ果てました。

授業に身が入っていないというのは聞いていましたが、それどころか学園内で火遊びをするだなんて…………恥を知りなさい!」

空気が鋭く振動する。

目の前の教師は般若仁王もかくやという位の鋭い眼光と形相でこちらを睨みつける。

「違うんです!あれは私達がやった訳では無く……」

ピシッ

セントレアが反論しようとして小指に鞭が飛んで来た。

「ッッッッ!!!!!」

「学園敷地内に勝手に穴を掘って、勝手に備品の油を使い、挙句に火を着けて木の実を燃やして校舎の窓ガラスを割った……………現場にはあなた達だけ!あなた達でなく、他に誰がやったと言うのですか?」

眼光がより鋭くなっていく。

鞭が空を切り裂いて破裂音を響かせる。

「違います!これは何かの陰謀です!誤解です!私達は陥れられたのです!」

鞭の破裂音が少し小さくなった。

言えるものなら言ってみろと目が語っている。

虚言やふざけた事を言えば……………とも言っている。

「私達はあの女、悪魔シェリー=モリアーティーに陥れられたのです!

アイツが私達姉妹を陥れる為に…ッッッッッッッ!!!!!」

その先は言えなかった。

破裂音が一際大きく響き渡ると、鞭が指を捉えていた。

「あの女?悪魔?あなた達、少しは言葉遣いを学んでは如何ですか?

そして、何故そこでシェリー=モリアーティーの名前が出てくるのです?

ミス=モリアーティーは貴女達が馬鹿な事をしていた時、丁度私の目の前に居ました。

どうして貴女達の火遊びに関われるのですか?」

淑女らしからぬ美しくない発言。更には人を陥れようとした発言。それが彼女の怒りに触れたのだろう。

ここで真実を述べれば私達のやった事は露見してしまい、鞭打ちは不可避。

しかし、構いはしない!死なば諸共!

あの女に鉄槌を!

「実は……」

「そう言えば、ミス=ミリネリア。貴女ですよね?ミス=モリアーティーに『私が呼んでいた。』と虚言を吹き込んだのは。

一体何が目的です?」

鋭い目がこちらを刺し貫いていく。

覚悟は決まった!

「私達が燃やしていたのはあの女の教科書です!

あの女が私達を陥れる為に教科書に細工を!」

ピシッ

「何という事をしているのです?

人の教科書を盗んだ挙句、それを燃やし、挙句に学園を傷付けた?

愚かしさここに極まれりです!」

ピシッ ピシッ ピシッ

炸裂音が私達をそれぞれ打ち据える。

「因みに、ミス=モリアーティーは破裂音がした時に私と一緒に居ました。

アリバイは完璧に有ります。どころか、貴女達が腰を抜かしている間に初期消火をしてしまいました。

危険に飛び込んででしゃばる事は褒められたことでは有りませんが、貴女達は彼女に救われたと言っても過言では有りません。

もう良いですか?

虚言の数々に愚行の数々。

貴女達のしでかした事への罰は追って言います。

それ迄の間、宿舎の自室で謹慎していなさい!

教室の荷物を引き上げて行きなさい!」

ピシァ!

「「「解りました。」」」

アイツは陥れられなかった。

しかし、教科書は燃やしてやった!ざまあみろだわ!




「教科書が無傷だとは思うまいよ。」

あの三人は今頃、教科書の件を正直に言って、シェリー君を陥れようとして失敗し、教科書を燃やした事を拠り所にしている。




授業が終わり、教室に三人が入って来た。

教科書を見て、ギョッとしていた。

恨みがましい、悔しそうな視線を向けながら三人はその場を後にした。



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