爆ぜる 燃える 贋作?

さぁて、では、説明するとしよう。

シェリー君を狙っていた連中は、今まで主に、シェリー君に対して直接、そして水を使って危害を加えに来ていた。

そして、その全てが悉く失敗していた。

この状況下で直接的な危害、そして水を使った策略は心理的に使う事は出来ない。

その状況下で次に考える次の一手は、水を使わない、その上で本人への危害でない、間接的な危害と考えられる。

傾向が解れば、後はその傾向を利用した手段で相手を陥れれば良いだけだ。

そこで私は本を盗ませる事にした。

しかも、爆発する細工の施された…………な。

爆発の細工の内容は簡単。本の中身を外枠だけ残して後半部分をくり抜き、中に木の実を詰め込んで接着剤で零れ落ちない様に糊付けしただけだ。

以前、夜にシェリー君に内緒で出掛けた時に得た木の実。あれを使った。

後は三人組が盗みを働きに来るタイミングで教科書を目の前に置き、盗ませる。

水で流せるサイズでは無く、切り刻むには手間の掛かるあのサイズの本を修復不可能で、かつ短時間で破壊するには燃やしてしまうのが最善。

そういう訳で、まんまと三人は丁寧に油まで掛けて燃やし、中の木の実が炎で熱され、爆弾の様に炸裂して周囲に欠片を撒き散らして危害を加えた訳だ。

炸裂した木の実は周囲に甚大な被害をもたらしつつ破裂音で目撃者を呼ぶ。

証拠の教科書細工は燃えてしまい、決して残らない。

燃えた木の実も三人の火遊びの結果として認識されるだけ。

かと言って下手な証言をして『教科書を燃やした』と言ってしまえば最悪な結末を迎えるだけ。

どの方向に転んでも三人が有罪判決。

疑いの目はこちらに向く事は無く、決してこちらには被害がもたらされる事は無い。


本来ならば小包爆弾よろしく中にニトログリセリンやナトリウムを仕掛けておきたかったのだが、如何せんシェリー君が使う教科書にそんなものを入れておくのは問題であるし、なにより、入手難易度&リスクと効果を天秤にかけた結果、木の実になった。

それでも、十分な効果は有ったから良しとしよう。






あぁ、教科書が燃やされたという点かね?

私がそんな間抜けな事をすると思うかね?

「あの……教授、これは一体どういう事ですか?」

シェリー君がこれ以上無く混乱していた。

『狐につままれた様な』という表現がぴったりな具合だ。良い感じに驚いてくれたものだ。

「どういう事……とは、何かね?」

勿体ぶって惚けてみる。


今はまさに授業の真っ最中。

三人の姿は無く、おそらくミス=フィアレディーの逆鱗に触れている所だろう。

そして、シェリー君は今、緑色の装丁の教科書を手に授業を受けていた。

そう、あの・・教科書

燃やされた筈のあの教科書が焦げ一つ無く、シェリー君の手の中に有った。

「教授は一体どんな魔法を使ったのですか⁉」

フフフフフフフフフ………ハッハッハッハッハッハッハッハ!驚いてくれた様で何より!

さぁ、種明かしといこうか!

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