無色の毒

『人間を何十人を同時に、しかもこの上無く最高精度で意のままに操る。』

動物2匹を手懐けるのとは訳が違う。

アイツらは薬の副作用で操りやすくなっていた動物だ。

人間とは難易度が違う。というか、人体操作なんてお伽噺を見た餓鬼か、狂った研究者の夢物語の産物だ。

それを今、目の前で実感している。

どんな手品かも解らない悪夢を。だ。

逃げても逃げ切れずに追撃を喰らい、傀儡になる手下逹。

半数は残っていた無事な奴等は最早残すところ僅か。

仕方無い。この手だけは使うまいと思っていたが、残された手立てはこれしかない。

懐から取り出した薬瓶を…一気に飲み干した。


ガチャン!


……………………………………………………………………………………………… 「ケケケケケケケケケケケケ!」 リスクのウヨサでンゲンニがラタシカウボウョキ、イナレラメトモニレダ!レオもンラカワカルナウド!が、ルキデラナイラクレヅチミ!

「殺す、コロスコワスクダクツブスヒキサクスコロスコワダククブスツキサクヒ………」

コワスクダ効果クツブスヒ短期決戦キサクスムスメネラウコロスワコ薬…゜…§‰♭∠�∇≡ΦРЗ┯∑�ыщ‡¶■¥′>%※⇒ヰ£*§≧△←↑…!




矢張り自分に投薬したか。

髭面が懐から取り出した何かを口にした途端、人間の言葉を失い始めた。

それは私が知らない言語だからそう聞こえた………訳ではなく、脳の言語野がまともに働かなくなってきたからだ。

自分達が作った薬物を自身に投与した。

生物の肉体をあれだけ急激に、強引に肥大化させる代物だ。副作用で言葉がひっくり返るくらいの事はあってもおかしくはない。寧ろ自然だ。

こちらは暴走した髭面が悶えているのに気を取られた残りの賊を全て傀儡にする。

後は目の前の巨大ゴリラ擬きを締め上げて御仕舞いだ。

5mの巨体にシェリー君の胴体よりも太い腕と足。

目は大きく見開かれて血走り、口は中途半端に開かれて涎を垂れ流している。

これを大人しくすればそれで御仕舞い。簡単だろう?

…………そうだなぁ……………。

「決めましたよ。あなたには肺一杯に息を吸い込んで、大人しく寝て貰います。拒否権は御座いません。」

一応声をかける。

「⇒щ∑‰←≡∇¶∑≡≡≡!!」

蒸気機関の様な呼吸と完全に人類の言葉でない何かを口にしながら両手と両足を地面に着ける。

醜く歪んでいる筋肉がビキビキと音を立てて膨張する。

拒否権はどうせ無い。

足掻こうが足掻くまいが結果は同じだ。

諦めろ。君には勝つ方法は無い。何故なら、勝つ方法は全て私が打ち砕いたのだから。



『気流操作』

私の魔法がとある変数を書き換えた次の瞬間。

ズドン!

ゴリラ擬きが飛び掛かって行った………何も無い森へと。

木々を薙ぎ倒して止まったゴリラはその格好のまま、大人しくなった。

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