遠回りする賊
「仕掛けは………これでお仕舞。」
張り詰めた糸を見てシェリー君がそう言った
「残すは確認のみ。住民の避難は完了しています。
あとは………迎え撃つだけですね。」
拳に力がこもっている。
「シェリー君はよくやった。
私は結局のところ暇だった。
それはこの仕掛けが誤作動を起こす可能性や作動しない可能性が無い。という事だ。」
事実、傍観させて貰ったが、仕掛けには欠陥らしき欠陥は一切見つからなかった。
「あとはここに賊共を誘き寄せるだけ。
存分にやりたまえ。」
「はい。」
力強く返事をした。
「畜生、あの餓鬼………絶対に許さない。」
賊のナンバー2、ドゥーイは怒りに震えていた。
洞窟の入り口を埋められた賊の大半、約200名は埋められた入り口の反対側にある、緊急用の出入口からわざわざ山を迂回してやってきた。
残りの人員は破壊された工場の修復をしながら並行して倒壊した洞窟の瓦礫をどかしてあの村に向かっている。
薬作りの材料が届かずに切れてしまっていたから、どちらにしろ工場の稼働は出来なかった。
洞窟はボスが無理矢理作ったものだから落盤は元々起こりやすくなっていた。
だからどうした?
あの餓鬼は俺らの
工場は完全に吹っ飛ばされたらしく、今のはスクラップした方が良いと言われた。
爆発の衝撃で商品が何本も地面に撒かれる事になった。
吹っ飛ばされた手下は死にこそしなかったが大怪我だ。
負け犬がご主人様の手を噛みやがって。
『負け犬は負け犬らしく、主人に忠実に従わなければならない。』
その事を、身を以て教えてやる。
「見えました、あの辺りです。」 斥候が報告に来た。
指を指し示す先には真っ白な霧の塊があった。
「
「申し訳ありません、あの霧で迂闊に近付けませんでした。」
「何をタカが尻尾巻いた負け犬にビビってる?
まぁいい。道は解るな?」
「勿論、一本道ですので。」
「案内しろ。」
斥候に言い付けると後ろの手下に向かってこう言った。
「
あと、洞窟を崩したバカな小娘は見付け次第直ぐにここに連れてこい。
ただし殺すなよ。後で俺やボスが
赤い色の宝玉が嵌まった剣を突き上げて叫ぶ。
村まで響き渡るような声で叫んだが、聞かれても構いやしない。どうせ
賊はぞろぞろと霧の中に足を踏み入れていった。
霧の中は1m先も怪しい真っ白な世界。
足元の道を辛うじて見ながら歩を進める。
吹き飛ばすか?いや、勿体無いか。
そんな事を考えている内に
ヒューー
風が何処からか吹き霧を吹き飛ばしていった。
目の前には廃墟同然の村が現れた。
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