真夜中の戦い

「ァあなたは、ミス=シェリー?こんな所で何をしているのですか?」


声が裏返りそうになりながら毅然とした態度で訊く。


ここにあのガキが居るという事は、あの二人は失敗したという事だ。


……………全く、使えない。






あたし自らやるのは良いが、全く以て使えないのはそれはそれとしてイライラする。


「ミス=フィアレディーから倉庫の片付けを申しつけられまして、言われた通り片付けていたのですが、見知らぬ暴漢から襲われまして……………命からがら逃げて来ました。」


そう言って階段をゆっくり降りて来る。


「それは、どんな輩でしたか?」


「それが、覆面をしていたのでよく解らず………」


良かった、予想以上にこのガキがバカでよかった。


覆面をさせておいたのは正解だった。


「何処に居るのですか?その……賊は?」


「向うの階段の踊り場と、倉庫の中に居ます。」


階段の中腹で止まり、ジェスチャーで場所を示す。


「宜しい、では、案内しなさい。


見廻りついでに斬り捨てましょう。」


そう言って鉄剣に自然に手を伸ばす。




お前をな。




「…………ですが、少し気になる事が有るのです。」


「何ですか?早くなさい。賊が校内に侵入したのなら一刻も早く向かうのです。」


早く降りて来い。


背中を見せろ。


叩き斬ってやる。


「賊は剣を持っていたのですが、持っている剣がミス=パウワンの持っている物と瓜二つ………というか、全く同一のモノに見えたのです。


もしかしたら…………」


ゆっくりと階段を又一歩降りる。


「何が言いたいのですか?」


「いえ、ミス=パウワン程の方の使う剣に似た剣を使っているので、もしかしたら剣に詳しい賊か、でなければ高貴な出の賊やもしれません。


もしかしたら……………手強いやもしれません。」


チッ…勘の良い奴だ。


「ッ気のせいでしょう。さぁ、速く案内なさい。」


「相手は複数居ます。さっきも言いましたが、手強い可能性もあります。


幾らミス=パウワンと言えど危険です。教員棟に私から応援を………」


そう言って階段を降りて教員棟に向か追おうとする。




チッ




「小娘の二人くらいで何を言っているのです⁉


私は強い。さっさと案内しなさい!」




足が止まった。


ガキの顔が少し笑った様に見えた。


「…………小娘二人?ですか。」


………………………………………………………しまった!


「私は賊、暴漢だと思っていたのですが…………おや?どうしてそんな事を御存じなのですか?」


階段を降りて問う。


「確かに、殿方にしては小柄だとは思いましたが、顔が解らなかったのでどちらとも言えないのですよね。


もしかして、ミス=パウワンは御存じだったのですか?賊の正体を。


それなら、何故知っていて止めなかったのでしょうか?」


このガキ…………!


「ミス=ナークとミス=エスパダは自白しました。


ミス=パウワン、何か言い逃れは有りますか?」


階段を降りて、ゆっくりと、わざわざこちらに近付いて来た。




矢張りバカガキだ。


日中は矢張り汚い手を使ったまぐれ。


こんな無防備に近づいて、馬鹿もいいところだ。




「言い逃れ?そんなものは必要ありませんよ。」


「では、職員棟で報告をさせて頂きます。」


「それも、必要ありません。」


「?」


「お前がここで頭カチ割れば報告なんざ必要無ェんだからよぉ!」




ブォン‼




ガキが剣の間合いに入った所で鉄剣を上段から思い切り振り下ろした。




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