先ず第一に実践して見せてみよう。

 バリバリモシャモシャバリバリモシシャモシャバリバリモシャモシャ…

 イライライライライライイライライライライライライラ!!!!!!!

 全く気が晴れない。

 お菓子が不味い。

 理由は解っている。

 あの下民の所為だ。

 ふざけている。

 何で私の前に居るの⁉

 あんな下民。到底、到底!私達高貴な令嬢の居る場に居合わせて良い筈がない!

 あのような下賤が何故同じ場に居るの?

 しかも有ろうことか私が座った席の目の前に!

 普通、豚が人間の目の前で食事を取るなんて有り得ない!

 豚に恥なんて期待はしていないけど、この高貴な私の目の前に居る事を場違いに思って豚でさえ失せるべきなのよ!

 豚舎に行って豚のエサを食べるべきなのに…………

 何故!何故あんなのが未だ居るのよ⁉

バリバリモシャモシャバリバリモシャモシャモシャバリバリモシャモシャ

 イライラしながらクッキーを食べるコション。

 その頭に浮かび、消えていたのは、『次、あの豚が何かしたらその時は如何イビリ倒してやろうか?

 いっそ先生方に言って退学にして貰おうか?』

 という、聴くにも見るにも堪えないものだった。


 ポタ………………


 コションの肩ロ……肩に何かが落ちた。

 肩に冷たい物が落ちて来た。

 肩を触った瞬間、冷たい感覚が手にも来た。

 透明な液体。

 雨漏り………そんな訳が無い!

 ここは由緒正しき、歴史ある、高貴な、私に相応しいアールブルー学園の宿舎!

 雨漏りなんてそんな貧乏人の出来事、ここでは有り得ない!

 しかも、私の部屋は理不尽にも最上階では無い!

 上の階この真上に居るのは……………………………


 「モー!リー!アー!ティー!ー‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 天井を見ると、隙間から何かが垂れて来る。

 ポタリ

 雫が垂れて、お菓子に当たった。

 あの下賤な豚!私のお菓子を穢した!

 下賤な豚だとは思っていたけど、ここまでふざけた真似をこの私に、私に!した!

 もう許さない!

 「跪かせて!踏みつけにして!監督生と先生に言いつけて!

 アイツの豚舎(故郷)をお父様にお願いして全員殺してやる!」

 怒り狂うコション。

バタン!

ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ!

ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ!

 扉を勢いよく開け、鼻息を荒げながら廊下をドタドタ歩いていく。

 手には雫で汚れたクッキー。

 顔は鮮やかなピンク色で、その恰好はまるで豚の様であった。



 「シェrrrrrrrrrrrッリーィィィッィィィィィィィィィィィィィィィィ


 モーーーーーーーーリアーーーーーーーーーーーーティーーーーーーーーーーー!」



 ドスドスと歩くコション。

 目指すは9階。自身の身の程も知らず、自身を侮辱し、クッキーと衣装を穢した卑しい豚の元。


 許さない!


 彼女は激怒し、階段を昇り、廊下を踏み鳴らしながらモリアーティー嬢の元へと向かっていた。

ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ!

ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ! ドタ!

 不慮の事故はその時起きた!


 バキャ!


 「ギャー‼」

 コションの悲鳴が廊下に響いた。

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