恐怖の淑女

 「何なのよこれぇ!!」

 廊下に豚嬢の声が響いた。

 「フフーン、では、行って見ようか?

 あぁ、私が替わろう。先ず、『基本その1:挙動不審はあらゆる完全犯罪を台無しにするから絶対にしてはならない。』だ。今回は初回講義。見ていたまえ。」

「え?教授、あの、この行動の意味……え?もう始まって…」


フッ


 「光栄に思ってくれ。私の講義は本来、見たら最期、次に活かす『次』は無いのだから。」

 ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシ

立ち上がり、窓に向かう。

ボオッ!!

ガチャン

「ふぅーっ!では、行こうか。」

ガチャン

カチッ

 扉を開け、鍵を締めると、廊下にはおかしなものが生えていた。

 「何なのよ!!このオンボロ!!

 お前達!!見てないで速く助けなさい!!」

 摩訶不思議!!

 下半身が無い豚嬢がなんと上半身だけで生きていた!!

 彼女はプラナリアポークだったのか…………………フフフフフフフフフフフフフフフ………ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 そんな訳無い。

 今まで下半身を吹き飛・・・・・・・・・・ばして生きていた人間・・・・・・・・・・は居なかった・・・・・・。

 ………………まぁ、今まで無かったからこれからもないとは断言出来ないが、これは例外だ。

 彼女は今、古くなった宿舎の床を、その質量で踏み抜いたのだ。

 天井から落ちてきた謎の水滴に怒り心頭。

 ドスドスと小物が威嚇するようなステップ床を砕かんばかりに上の階に上がり、そのまま床を踏み砕いたのだ。

 いゃぁー不運とは恐ろしい。

 「何事ですか!?」

 階段を上がってくる者が居た。

 絵本の魔女のような細い骨に皮が辛うじて張り付いたような婦人だった。

 小さな眼鏡に上品な紺色の服。 しかし、その瞳は鋭く、人を値踏みする様に睨んでいた。

 豚嬢を遠巻きに見ていた者、扉から覗いていた者達が慌てて退散を始めた。

 「シェリー君。彼女は、何者かね?」

 「教授!彼女は先生です!!

 本学園最も優雅で厳格で礼節を重んじる偉大な淑女。

 ミス=フィアレディーです。」


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