完全犯罪講義 開始
休日もシェリー=モリアーティーの朝は早い。
朝日が昇るか否かの内に食堂に行き、まだ誰も居ない食堂に行き、席を確保し、隙あらば勉強する。
そして、罵倒や嫌味を言われ、不快になりながら味気無い食事を取り、昼までの間ずっと勉強をする。
この学園に彼女の居場所は無い。
迫害され、蔑まれ、罵詈雑言を吐かれる地獄。
楽しくも無く、ただただそれを聞いて、机に向かう。
あと二年と少し。堪えればよいと己に呪文のように言い聞かせ、
あと二年と少しで縁も所縁も無い場所で私は彼女らと無縁で生きて行けると思って……………
そんな日々に疲れて投げ出そうと思った時、あの人は来たのです。
私を嗤った。
私のやろうとしていた事を嗤った。
馬鹿馬鹿しいと。
不合理だと。
不条理だと。
私を責めず、しかし、私を嗤ってくれた。
地獄の中に有って唯一、私の前に人が現れたのです。
「モリアーティー嬢。君に教え授けてあげよう。
理不尽を、不合理を、不条理を、暴力を、暴虐を、圧政を、残酷を、…………………
それら全てを、手を触れず、誰にも悟らせずに、粉砕し、踏みにじり、蹂躙する…………
完全犯罪という方程式を。
この私、プロフェッサー:ジェームズ=モリアーティーが教授して見せよう。」
私を死の淵から救い、そう言ってくれた私と同じ名の教授。
彼は記憶を失っていると言っていましたが、その言葉には己が経験したであろう全てが籠っていました。
不思議と説得力があったのです。
彼なら、私をこの地獄から救い出してくれる気が、そんな気がしたのです。
昼を過ぎた頃。
昼食を終え、シェリー=モリアーティーが八つ当たりをするかのように机に向かい、数時間経った頃、それは起きた。
「シェリー君。
これから講義を始める。」
それ迄沈黙を貫いていた教授が私に声を掛けたのです。
「いきなり如何されたのですか?教授。」
唐突過ぎて理解が出来ませんでした。
「君に魔法を見せると言っただろう?
今から不慮の事故で豚嬢が酷い目に遭う。
それを観察しつつ、君に私の手練手管を教えてあげよう。
私の手口を知って尚生きていた人間など……………ッ!……何でもない。
さぁ、今、君が持っている物を出したまえ。
それらを用いて完全犯罪を開始しよう。
完全犯罪の講義をこれから始める。」
シェリー=モリアーティーの部屋にあったモノ
・筆記用具
・教科書
・洋服3着
・簡易的な救急箱
・便箋セット
・生徒手帳
・工具一式
・靴
・裁縫セット
ざっとこんなものだ。
これだけでは……………………………………………………………………………
「これではその……………何かを成せるようなモノ等一つも無いのですが……………」
シェリー嬢は言葉を詰まらせた。
確かに、毒の一つも無ければ気の利いた凶器の一つも無い。
裁縫セットには針と糸と小さな鋏が有るばかりで、溶けて無くなる糸なんて無く、
工具一式には小さなトンカチや小さなノコギリ、それにヤスリや錐が有る程度。
これだけ有れば十分過ぎる。
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