教授は学ぶ、異世界で。

 「これがこの学園のテキストか………。」

 パラパラとボロボロの教科書を流し読みする。

 言語、数学、理科、社会、生物、

 理数は私の知る数学や化学が大半。大差は無い。

 言語系は私の知るものとは全く違うが、原則として文法は同じ、その上単語も同じだ。

 要は記号、文字だけ覚えれば問題無い。

 全記号(文字)を覚えた。

 これでいま彼女が使っている言語はマスター完了。

 他の未収得言語が有るにしても、一つの言語を読み書きが出来るのであれば、それ以外の言語も習得出来る。

 教科書に用いられる言語を使えるのであれば、学校の図書館にでも行き、書籍を読み漁ってシェリー嬢も知らないこの国の様々な情報にもアクセスが可能だ。

 因みに、私が何をしているかと言えば、現在、私は彼女に頼んで教科書を見せて貰っている。

 一応の確認だ。

 魔法という変数の追加以外に未知の変数が有るか否か………それを調べていた。

 格好付けて大丈夫とは言ったが、面白……厄介な変数を放っておくほど私はマヌケじゃない。

 『こんなの…………計算外だ。』

 等と言うマヌケな発言は私の計算式には存在しない。

 問題はそれより、この教科書だ。

 不自然なまでの劣化度合い。

 陽光や読み続けた結果…………ではない。

 泥汚れや水濡れ。切り傷擬きもある。

これも彼女への悪意、害意の証明だろう。

 ………何が淑女だ。馬鹿馬鹿しい。

 さぁて、次は………魔術書を見てみるとするか。

 こればかりは完全な未知。言語よりは骨が折れそうだ。

 そう言ってモリアーティー嬢……中身はこの教授だが、彼女(彼)はボロボロになった魔術書を開いた。


 『ファイア


 小さな火が指先から出た。

 魔法、一応の再現完了。

 シェリー嬢が出来たのだから私が出来るのは無論道理だが、実際私がそれを自然に行使出来るかは、別問題だった。

 しかし、ここでその問題は解消された。

 この魔法の技能がどの程度高いか、低いかは知らない。

 が、彼女が最初に行っていた特待生の話からして、彼女の技能が低いとは考え辛い。

 それに、

 (マッチ一本も無く、これだけ火が出せれば十二分。城一つくらいなら燃やせそうだ。)

 今回は流石に初回。念の為、魔法は使わないでおくが、これから使えそうだ…………。

 灯った火が消える。

 シェリー嬢の身体で私は笑った。

 「あの………教授……宜しいですか?」

 私の頭から声がした。

 「なんだね?シェリー嬢?」

 おずおずと言って来る。なんだ?

 「もうそろそろ食堂に行って貰って宜しいでしょうか?」

 窓の外はまだ夕刻未満。と言ったところ。夕食の時間には未だ早い筈だが………あぁ。

 「済まなかった。何か有れば。又言ってくれ。」

 食事時も何かしらが待ち受けているのだろう。

 全く、憂鬱極まりない。

 「………いいえ………………………………。」

 そう言って、私は一度彼女の身体から出て行った。

 「良ければ私が出て行っても構わない。」

 「…………有り難う御座います。

 でも、先ずは私が行きます……………食堂の詳細な場所や給仕方法を教授は知らないでしょう?」

 あぁ、そう言えば、確か2~3階だったかな?

 それ以外は知らない。か。

 まぁ、彼女を尊重しよう。不味ければ私が出て蹂躙すれば良い。

 そこまでは私は観察に回ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る