幻想崩壊

 「牢獄だな……これは。」

 窓から差し込む陽が照らし出すのは扉、扉、扉……………………幾つもの同じ形の扉が有るだけ。辛うじて違いが有るとすれば、扉に着けられた数字位のものだ。

そして、その間に幾つかトイレと水道が有るだけ。

 男達の夢と妄想が産み出した女学園はナンセンスだが、かと言ってこれが現実では 本当に牢獄と言わざるを得ない。悲しいものだ。

 足音を立てないように廊下を歩く。

 サッ……サッ……サッ……サッ…………………

 音を立てて又面倒なのに出会っては敵わない。

 「そう言えば、今の時刻は…出歩いて問題無いかね?」

 「はい。今日は休日。学校はありません。

 明日まで休日で、明後日から授業が有ります。」

 本格的な勝負は明日から……とでもいったところか。

 窓から見える光景は中々の高度。

 3・4階では無いだろう。

 見た所…………ここは9階…………といったところか?

 「ここは9階のようだが、この建物はどれくらいの高さなのかね?」

 「……よくお解りに!」

 「舐めないでくれ給え。これ位、造作もない。

 で、ここはい一体何階建ての監ご……宿舎なのかね?」

 「全15階になっています。

 一階は教師棟。

 二・三階は食堂、あとは」


 ギィ!


 解説を聞いていると足元で床が大きな音を立てた。

 と言っても、誰かに気付かれるような音ではないのだが………シェリー嬢は青い顔をしていた。

 「!申し訳………!」

 宿舎自体が老朽化していたのだろう。

 何度も言うが、そこまで大きな音では無い。扉の内に響くようなモノではない。

 「大丈夫だ。問題なぞ無い。」

 少しナイーブになっているな。

 無理もない、先程まで死のうとしていた人間が、幽霊に言われて今までとは真逆の行動をしているのだ。

 ここまで倒れないでいるのが素晴らしいと褒めるべきだろう。

 全階層を見る、宿舎の外や敷地外を見るのは日を改めてと言ったところか。

 現時点で一手目の手法は大方組み終えた。と言っても構わないのだ。

 いくつか欲しいものや、より良い一手の為の準備や下見はあるが、これなら後にした方が良い。明日までは温存させた方が良い。

 豚嬢のデータはさっきの分だけで十分過ぎるし。

 というか、もういい!!

 シェリー嬢に言わせるのも酷だし、聞く方もウンザリする。

 後は準備の後に実行。

 それで方程式の証明が終了する。

 少し用意は必要だが、片が付くのは時間の問題。

 今日はもう、必要が無いだろう。

 「帰ろうか、シェリー嬢。」

 「解りました。教授。」

 サッ……サッ……サッ……サッ…………………

 音を最小に、帰って行った。

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