第65話 夜はこんなことやってました

「ウノ!」


「わぁ、誰かマドカにドロー2かワイルド出して!」


「リバースしてくれたらできるよ。」


 弓道部の合宿の夜は、自称トランプの女王のエミ先輩の企画でカードゲーム大会が開催された。

 五つのグループに分かれてトランプやウノ、ニムトをしていく。


「せっかくだから、賞品を出すわよ。三年生のお下がりで悪いけど、後輩全員に部T(弓道部Tシャツ)をプレゼントします。一位と二位になった回数が多い人から好きな色の部Tを選べることにするね。」


 部Tは十色以上あるが、一人二、三枚しか持っていない。

 みんなは自分が持っていない色が欲しいだろうが僕は違う。

 狙うのは友香先輩の部Tのみ。


「エミ、面白いこと考えるね、リサイクルにもなるし。私、ピンクの部T出すわ。」


「友香先輩の部T、欲しいです!」


「私もピンク色の欲しい!」


 ライバルが多いようだがこのポーカーフェイス加藤拓也に勝てるやつはいまい。

 友香先輩の部Tがピンクだろうと蛍光グリーンだろうと関係ない負けるもんか。

 カードゲームはいつも妹や弟を泣かすほど勝っている。(手加減という意味、知らないんだ。)

 絶対に手に入れてやる――。



「加藤君は、どうしてそんなにジョーカーばっかり引いてるの?」


「……。」


「また、加藤君の負けだね。カードゲームは苦手なの?それともあんまりやったことないの?」


「なんか読めちゃうんだよね。普段はクールな顔してるのに。」


 同じグループのエミ先輩はトランプの女王だけあって、表情からは手札が全く

読めない。

 いつもは人のいいけんちゃん先輩も、スキップやリバースで姑息に嫌がらせしてくる。

 二年のナオト先輩に至っては、これでもかと嫌がらせをしてくる。

 ニムトでは大抵、おっとそう来るかというカードの出し方をしてきて牛が貯まっていく。


「悪いな、カードゲームで負けるわけにはいかない。ウノの王子としてはな。」



 結局僕はブービーで、ビリはとことんついてなかったという、マーガレット。

 ぼくが選ぶ番ではもちろん友香先輩のピンクの部Tは残っていなかった。


「マーガレット、どっちがいい?僕は残った方でいいよ。」


「ありがとう、加藤君。私、水色がいいかな。蛍光グリーンはちょっと……。」


 ……蛍光グリーンの部T、僕のセンスにも合わないんだよな……。はぁ。


「加藤君、それボクの部Tだね。」


「光栄です。けんちゃん先輩。大切に着ますね。」



「マーガレット、どうしたのしょんぼりして。水色、持ってる色だった?」


「友香先輩、私Lサイズだとちょっときつくて……LLサイズが良かったんです。」


「あら、私も一年のときはぽっちゃりしてて部TがLLサイズなの。今はLで大丈夫だから、私のと代えてあげる。同じ水色のあるから。」


「うれしい!ありがとうございます!」


 おいマーガレット、一体どういうことだよ。

 このけんちゃん先輩の蛍光グリーンLL部Tと、友香先輩の水色LL部Tと交換してくれよ。

 そして、ナオト先輩、どうしてピンクの部T握ってるんすか……。

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