第48話 続金城劇場・誕プレ渡し忘れた
「キャサリン、これ道場に持っていっておいて。マーガレット、しゃべってないで練習して。スーザンとサマンサは二年生に見てもらって。」
「けんちゃんこんにちは、練習中ごめん。素敵な名前を呼びまくってるね。」
「(金城君、心配で高校まで来ちゃったの?そこまで友香ちゃんのこと…。)素敵な名前は、もともとは友香ちゃんのせいだよ。いや、ごめん、やっぱり一年のせいだな。」
「えっ?あ、それより甲斐君から知らせてもらったよ。ありがとう、助かったよ。ところで例のやつってどいつ?」
「今、友香ちゃんが素引き(矢をつがえないで弓を引く練習)見てやってるやつ。」
「ふうん、なんか見たことある…。拓也か!あいつ、こんなとこにいたのか!」
「知り合い?生き別れの弟とか。」
「そんなんじゃないよ。母方の
けんちゃんは納得したように僕を見る。何を納得しているのだろう。
「道理で好みが似ているというか、変ったのが好きというか…ごめん。」
何か失礼なことを言われたようだが、そんなことにかまっていられない。
あいつか……一人っ子の僕に最も近いのは、母の妹の子である拓也だろう。
そうとわかれば扱い方は心得ている。
築城しなくてもいいが早めに谷底に突き落としてコンクリートで埋めておかないと厄介だ。
友香がけんちゃんと話している僕に気が付いて、拓也と一緒に近くに来る。
金城劇場を始めた方がいいな。
「あきら、どうしてここにいるの?」
「S高の卓球部の部長に荒木が用があって、代わりに来たんだよ。(もちろん嘘です)うちも一年生が入ったから、荒木は忙しくしててね。やあ拓也じゃないか、弓道始めたのか。」
たった今気が付いたように言う。自然な感じに言えたかな。
拓也は驚いた顔をしている。そうだろうな。僕もさっき驚いたし。
「あきら兄ちゃん!」
「加藤君とあきらは知り合いなの?」
「母方の従兄弟同士なんだ。」
「加藤君って熱心で、弟みたいな後輩なんだ。」
友香はニコニコと言う。
「へー弟みたいな後輩か。僕も拓也は弟みたいに思ってるから、よろしく頼むよ。」
友香が道場に練習しに行った隙に、僕は拓也を拉致する。
「拓也、毎日友香と一緒の電車で通学してるそうじゃないか。ありがとう。彼女が痴漢やストーカーに遭わないようにしっかりと見張ってくれないか。心配だからね。」
僕は精いっぱいの善人面をして拓也に微笑んだ。拓也は警戒した顔で固まっている。そうだ、片平さんを瀕死に追いやったセリフを言っとくか。
「僕がいなかったら拓也は幸せになれただろうね。でも残念だったね。友香は既に僕のものなんだ。」
BGMはトッカータとフーガ、照明さん、フェードアウトで暗転にしてください。
金城劇場をお楽しみいただけたでしょうか。僕は不敵に笑うと舞台を後にした。
「………けんちゃん先輩、友香先輩の彼氏があきら兄ちゃんってこと、知ってたんですか?」
「知ってたよ。」
「何で教えてくれなかったんですか!」
「(ほらね。)そんな人間関係まで、面倒見切れないよ!でも、弓道女子はビシバシ的中する男子が好きだから、頑張ってみたら。僕は金城君より後輩の加藤君の味方だよ。」
「百発百中すれば、いけますか?」
「四発四中すればいいから。(こんなことで諦めてもらっては困るよ。金城君には悪いがボクは弓道部が盛んなるように加藤を応援しようじゃないか。たとえ少々姑息なことをしても)さあ、まずは練習だ。」
「はい、けんちゃん先輩、お願いします!」
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