第49話 友香へのプレゼントと僕がもらったもの
「誕生日おめでとう、友香。」
この前に会った時は動揺することがあって、誕プレを渡しそびれた僕は友香の家まで届けに行った。
お茶でも飲んでってよと誘われたので、家に上がらせてもらう。
「今年は何かな、開けてみるね。わぁ、今年もオードトワレ?あれ、なんかこれ、優しいフローラルな香りがするね。ねえ、これって、あきらが好きな匂いなのか、私のイメージなのかどっちよ。」
「うーん、どっちも。」
友香はニヤリと笑う。
「どっちにしても、自分が選んだ匂いが彼女からしてるって、自分のもの感がするんじゃないの?」
「言われてみけば、そうかも。」
「でもさ、私、オレンジのを使う時、いつもあきらのこと考えてたよ。これもきっとあきらのこと考えて使うだろうな。」
こういうこと、さらっと言ってくれるところが友香のいいところなんだよな。
プレゼントした僕の方がうれしくなるなんて。
「あれ、なんか、カードも入ってる。バースデーカード……じゃないな。えっ、『お願いききます券』が二枚。何これ?」
「去年と一緒じゃ、つまんないだろ。僕が気が乗らないけど、何かやってほしい時に使ってよ。出来ることなら叶えてあげるよ。」
「お手伝い券とか、肩たたき券みたいだね。ありがとう。何に使おうかな。お姫様抱っこしてもらうとか、壁ドンしてもらうとか…。いや、もったいないから大事に使おう。失くすといけないから財布にしまっておくね。」
友香はうきうきと財布に券をしまう。
何に使われるかわからない、僕もちょっと楽しみだな。
壁ドンなら何とかなるけど、お姫様抱っこなら今から相当筋トレしないと。
「ところで、他にもお茶の支度がしてあるけど、誰か来るの?」
「和兄がインターンでこっちに来るんだけど、彼女の百合さんも一緒に遊びに来るんだって。お母さんが駅まで車で迎えに行ってて、もう来るけど。」
「あの、名字騒ぎの南村さんだっけ。上手くいったんだね。」
どんな人なんだろうと思っていると、到着したようだ。
「百合さん、お久しぶりです。」
「友香さん、こんにちは。会えてうれしいわ。こっちの彼は?」
「私の彼氏の金城君です。彼、私が困ったら、一色になってくれるっていうから、百合さん、安心してくださいね。」
「まあ、ありがとう。和くんと一緒で優しい人なのね。」
百合さんはおしとやかで優しそうな、いいとこのお嬢様って感じで、友香のような姑息感は全く感じられない。きっと姑息なところはないんだろう。
一人娘で名字をこっちの家の…とか言われてたら、さぞかし困ってただろう。
百合さん、一色家のことは優斗と、一応僕にお任せください。
「夕飯はカレーにするから、金城君も食べていって。いつも友香がごちそうになってるし、カレーなら人数が増えても対応できるから。(あっ、お皿足りるかしら。この前、捨てすぎたから…。)」
「私もやります。」
「百合さんは座ってて。マカロニサラダはもう作って冷蔵庫に冷やしてあるから。」
「でも、和くんの好みの料理とか知りたいですし。」
お茶を飲んだ後、二人は仲良くキッチンに立つ。友香はマカロニサラダを作ったからといってお手伝いを勘弁してもらってお兄さんとしゃべっている。
「私はルーの箱に書いてある通りに作るだけよ。」
「私もです!あの作り方が一番理に
「そう、わかってるじゃないの、百合さん。ルーはうち、これなんだけど。」
「同じです!(だから和くん、私のカレーが好きだったんだ。)私料理って、書いてある作り方の後は、材料の良さと切り方と火加減だと思うんです。」
「若いのにやるわね。私はそこにたどり着くまで十年かかったっていうのに。」
「和兄、百合さんと上手くいって良かったね。お母さんと百合さんすごく気が合うみたいだし。」
「うん、友香や金城君に背中を押してもらって良かったと思ってるよ。金城君、ありがとう。」
「いいえ、役に立てたのなら良かったです。」
カレーが出来上がる頃、友香のお父さんと優斗が帰ってきた。
「何だかお盆の親戚一同揃いましたって感じだねぇ、お母さん。」
「あなた、早く着替えてきなさいよ。」
食卓は六人用だけど、ぎゅうぎゅうだ。僕は多人数に気おされて、隅で大人しくしている。
「あきら、人数多くて驚いてるの?」
「うん、いつも三人が当たり前だから。」
「私も一人っ子だから、そう思ってたの。」
「百合さん、オレ、百合義姉さんって呼んでもいいですか。」
「優斗、お前!」
「いいわよ、和くん。弟が出来たみたいでうれしいわよ優斗君。」
そういうことなら、もしかしたら将来僕に、おにいさんと、おねえさん、おとうともできるのか。ずっと一人っ子だったのに。
「優斗、僕、いもうとも欲しいんだけど。」
「え?先輩何ですか、それ。」
「やられたな、優斗。」
優斗以外の全員は僕の言っていることが分かったみたいで笑いが起きる。
優斗も気が付いたみたいで、まず、おとうとに優しくしてよとふくれている。
カレーとサラダがとっても美味しかったし、楽しい晩御飯だった。
渡したプレゼント以上に幸せな気持ちをもらったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます