第42話 小話 少年は少年たちに出会う
「君、ハンカチ、落としたよ。」
「ありがとう、これ大事なやつなんだ。」
オレが拾ったのは青いレースで縁取りがしてあるハンカチ。
K高校入試の日、トイレの外でハンカチを落としたのは人の好さそうなのんびりした顔のやつ。
「やっべー、翔太、ハンカチ落としちゃったよ。」
「縁起悪いな、優斗。」
「優斗、そのハンカチ、なんか特別なの?」
「いいだろタクミ、金城さんが作ったんだぞ、これ。合格のお守りなんだ。翔太も色違いでもってるんだよ。」
「えっ、いいなー。うらやましい。」
「合格祝いに、タクミも作ってもらえば。卓球部入るんだろ。」
「えー頼んでもいいかなあ。」
「マサルのとついでに頼んどくよ。」
「優斗、こっちも二人位K高校受けてるんだ。」
「わかったよ、翔太。それにしても、早く卓球部に入って卓球したいな。」
卓球部という言葉が聞こえて、オレはちょっとそっちを見た。卓球は小学生の時からやっていて、高校でも続けるつもりだったから。
それにしても、今、中高生男子にレースのハンカチが流行っているのか。テレビアニメのI am(編む) 編み物boy.の影響かな。オレは中三の九月に転校してきて、このあたりにほとんど知り合いはいないし、受験勉強をものすごく頑張ったので流行からも後れているんだろう。
「合格して、一緒に通えるといいね。」
入試が終わって帰り際、ハンカチ男子に声を掛けられた。できればかわいい女子に言われたかった。
ハンカチ男子は、一色優斗。その友達の鈴木翔太とオレ、佐々木真一は無事にK高校に合格して、卓球部に入部することになる。
レースのハンカチはまだ波乱の予感を含んでいる。
「姉ちゃん、K高校に合格した卓球部の友達と、翔太の友達も合格祝いにハンカチ欲しいって。」
「そんなに何枚も頼めるかなあ。何枚いるの?」
「たった四枚だから、頼んで。」
「マジで?自分で頼めば。」
「四枚も頼みにくいもん。図々しいって思われたらやだし。姉ちゃんはもう図々しいって思われてるだろ。」
「……一応頼んでみるけど、それが私からの合格祝いだからね。」
「ありがとう!姉ちゃんって図々しいだけじゃなくて、けちで優しいね。痛っ!」
ちょっと腹立たしいがその通りだったので、軽いデコピンで許してやる。
あきらの夕食後のレース編みはまだまだ続く。
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