第37話 小話 ファーストキスはカレー味

「おはよう、百合。朝ご飯食べる?」


 次の日の朝、ブラックリリー達は引っ込んで、百合が目を覚ますと、和くんがお粥と卵焼きとお味噌汁をつくっていてくれた。

 いい匂い。優しい声だなあ。


「和くん、泊ってくれたんだね。ありがと。お腹すいたから食べる。」


「熱はどう?」


 和くんがおでこを触って、熱はないみたいだねって、微笑む。体はだいぶ楽になってる。


 そこへドアチャイムが鳴る。


「こんな朝早くから、一体誰だろう……。」


「ヤバイ!忘れてたわ。和くん、今すぐここから逃げて!ああ、もう間に合わない!引き返せないわよ!」


「えっ、何が一体……。」



「百合、風邪は大丈夫なの?お母さんとお父さんが来たから、もう大丈夫……あら、一色君いたの?」


「……おはようございます。」


「一色君、いるならいると知らせてくれないかね。それならこんなに大急ぎで来なくても、良かったんじゃないか。連絡先交換してもらっていいかね。」


「あなた、百合と四人で家族ラインのグループ作りましょうよ。そうだ、一色君がいるなら、私達は観光に行きましょう、お父さん。」


「観光もいいけど、その前にお腹すいたんだけどなあ。百合のこと心配して朝食も食べずに新幹線に乗ったから。」


「じゃあ、朝ご飯頂いていきましょうよ。なんかいい匂いするわね。」


「僕が作ったのでお口に合うかわかりませんがどうぞ。」



 四人でローテーブルを囲んで朝食を食べる。


「一人増えるだけでにぎやかでいいわね。」


「三人が普通と思っていたからなあ。百合が下宿してからは二人だけで寂しかったよ。母さん、うちを二世帯に改築するか。」


「ゴホッッ。」


「やめてお父さん!和くんどこに就職するかは、わからないから!あんまりグイグイ来ると、私振られちゃう。」


「すまんすまん、今のは忘れてくれ。ところで正月は一色君もうちへ来ないかね。」


「いい加減にしてよっっ!まだ早いって!」


「あの、百合さんの熱が上がるといけないので、もうこれくらいに。すみませんが、台所を片付けたら、一度下宿に帰りますからしばらく居てください。買い物してから午後にまた来ます。百合、夕ご飯、カレーでいい?」


「うん、ありがと。カレー食べたい。」


「なあ百合、観光したらお父さんたちもカレー食べに来ていいか?」


「……来れば。」


【【ダークリリーもカレー食べたいわ。】】


【呑気にカレー食べてるだけじゃだめよ。次の作戦を練りましょう。ふふ……ブラックリリーはいつでも百合の味方よ。】











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る