第36話 小話 ダークリリー

「和斗君、今から来てくれるの?お土産とタッパーウェア?うん、家にいるよ。」


 何ごともなくクリスマスも過ぎた年末の夕方、風邪気味で寝ていたら和斗君から電話があった。彼がタッパーウェアを返しに来たついでに、肉じゃがを食べていってもらって、余りをまたタッパーウェアに入れて持って帰ってもらって、また返しに来たついでに、ポトフを…ってやってたのにもうダメだ。今日は体がしんどくて作れない。結構親しくなったのに泣ける。


【【カレー作ったら、また来てくれるわよ。】】


 今日はブラックリリーも風邪で、とうとうダークリリーが出てきた。ダークリリーはブラックリリーよりは優しく見えるけど、ダークすぎていつもは表に出さないけど。

 ドアチャイムが鳴る。和斗君だ。ああ、体がだるい。


【【百合、ダークリリーに任せておけばいいわよ。】】


 ダークリリー、よろしく。


「南村さん、これ、実家からのお土産とタッパーウェア、って大丈夫?具合悪いの?」


「ちょっと風邪ひいちゃって。病院で薬もらってるから大丈……。」


 ダークリリーは思いっきりふらつくわよ。和斗君が支えてくれたの。


「寝てた方がいいよ。歩ける?運ぼうか?」


「運んでください。」


 和斗君にお姫様抱っこされた!ダークリリーはスイッチが入りましたわ。もちろん、しっかりと抱きついておきましたわ。


「ちょっと顔が赤いね。熱あるんじゃない?水分ちゃんと取ってる?」


「う…ん、のど乾いた。」


「ちょっと待ってて、水持ってくるから。」


 ダークリリーはまばたきを我慢して潤んだ目で和斗君を見つめるわよ。


「誰か女子の友達、呼んだ方が良くない?」


「みんな帰省とか、旅行でいないの。私も今日帰省するはずだったし。」


「お腹空いてない?お粥くらいなら作れるけど。」


「食べたいです。」


 ダークリリーは遠慮って言葉の意味、わからないのよ。

 和斗君のお粥はホッとする味でとっても美味しかったわ。薬も飲んで、一息つくわ。


「一人で大丈夫そう?俺、そろそろ帰…。」


「帰っちゃうの?もし夜に具合悪くなったらって考えると、心細いな。予定がないならもう少し一緒にいて欲しい……。」


「……じゃあ、俺リビングにいるから、何かあったら声かけて。」


 しばらくして、トイレに行こうとリビングを通ると、和斗君がうたた寝してるわ。のんびりした、人の好さそうな顔。ダークリリーは和斗君のこととっても好きなのに、百合はどうして彼を手に入れることができないのかしら。愚図でのろまなカメさんね。あっ、和斗君に毛布かけてあげるわ。


【チャンスよっダークリリー!行っけー!ブラックリリーアタッーク!!】


 あっ、ブラックリリーなにするの!

 ブラックリリーのせいで、ダークリリーはローテーブルの角に向う脛を強打して、毛布と一緒に和斗君にダイビングしたわ!

 ダークリリーは起き上がろうと和斗君につかまるけど、慌てていて上手く動けないし、向う脛が痛すぎて涙が出るわ。


「えっ、百合どうした?」


「ごめん、私あの、…。」


 ダークリリー、痛すぎて涙がでちゃう。だって、マジ痛いんだもの。

 ブラックリリー、覚えてろよ。いえ、覚えてらっしゃい。

 和斗君はダークリリーを毛布ごとギュッと抱きしめるわ。えっ、これってもしかして、上手くいったのかしら。


「ごめん、百合。」


 えっ、謝られてるわよ、ダメなの?ダークリリーでもダメ?お断りされるの?


「今すぐに結婚とか名字変えるとかは決められないけど、これから考えるから俺と付き合って下さい。百合のこと、やっぱり好きだよ。」


 ブラックリリー、グッジョーブ!!


【いつも言ってるでしょう、私はブラックリリー。ブラックだけど、百合の味方よ】


【【今回はダークリリーも頑張ったのよ。私だって百合の味方なんだもん。】】






























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