第33話 I am(編む) あみもの boy.

 鎖編みすらままならないのに、いきなり編み物の海に飛び込んだら、絶対溺れる。


 友香がどうやら僕に、クリスマスプレゼントで何やら編んでくれるようだ。彼女にだけ編み物をさせておくわけにはいかない。僕も編もう。今、テレビアニメで『Iam(編む)あみもの boy.』っていう、あみもの王子が悪と戦うやつが小学生に大人気になっているらしいし。

 だけど、どうやったらいいのか。とりあえず、母さんに聞いてみるか。


「ハンカチに、レース糸で縁をかがってみたら?出来そうなら、少しだけ飾りをつけると可愛いわよ。たしか材料、残ってたと思うけど。」


 ハンカチの布部分はちょっとお高いガーゼ素材にした。水分をよく吸収するし。

 縁取りのレース糸はピンクと青と緑が残っていた。彼女のイメージだと青だけど、ピンクも可愛いな。まず、青で縁をかがってみて、いけそうならピンクで飾りにチャレンジするか。二枚あってもいいし。


 レース糸が細いから、レース針も細い。母さんが教えてくれた通りに、ちまちまとかがっていく。何だよ、結構面白いじゃないか。もくもくと作業する。

 うーむ、初心者とは思えない出来だ。楽しくなってきたので、どんどん進めていく。よし、青とピンクは友香にあげて、緑のシンプルにかがるだけのは自分用にしよう。


 友香にラインする。

『僕もプレゼントに編んでるから、楽しみにしてて。』

『ええっ、マフラーとか?』

『そんな大作じゃないよ。』

『鎖編みのあやとりのひもとか?』


 そんなの彼女にプレゼントするやついるか?

 ハッ、まさか友香、えんじ色のあやとりのひもをくれるつもりなのか?

 まさか、それならまだ自分で仕留めた獲物をプレゼントしてくれるだろう。

 ちょっと心配だが、クリスマスの楽しみにしておこう。常識の通用しないところがたまにあるのが、友香の魅力の一つだからな。


 友香と付き合いだしてから、プレゼントすることと、プレゼントされることを、とても喜べるようになった。ほんのちょっとした物でも。これからも友香以外の友人にも機会があったらプレゼントしていこうと、ほんのり思った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る