第28話 片平マリナ再び
「マリナ、何を見てるんだい?怖い顔して。あの卓球してるカップル、知り合いなのか?」
従兄で大学生の晴兄ちゃんが聞いてくる。晴兄ちゃんとボーリングをしてからゲームコーナーへ行こうと出てくると、金城君と、一色さんがムカつくほど楽しそうに卓球をしていた。
「うん……。振られたというか、彼女の方にやられた……。」
私は片平マリナ。この前、何の用意もせずに金城君の彼女を押しのけてやろうとしたら、谷底に突き落とされてコンクリートで埋められた。やっとそこから脱出したが、どう考えても納得いかない。あの子より私の方が可愛いし、性格だって似たようなものだろう。金城君家に連れ込むなんて、姑息な事してくれて。
「マリナを振るなんて許せないな、あの男。俺こう見えても大学の卓球サークルで上手い方なんだ。あれくらいのやつなら公開処刑にしてやるよ。」
「でも金城君、結構強いらしいよ。」
「そうは見えないけど。まかせとけよ。」
私達が近づくと、二人が気づいてプレーをストップする。警戒しているわね。
「こんにちは、片平さん。デート?」
「従兄よ。一色さん。」
「ねえ、彼上手いね。俺も大学のサークルでやってるけど、勝負しない?」
「大学生なんですか、ぜひお願いします!」
なんか喜ばれてるけど、なんなのかしら。
「ちょっと待ってくださいね。ラバー(ラケットの裏表に張ったゴム、いろいろな種類がある。ピン球をたくさん打ってつるつるになったら張り替える)張り替えたばっかりで友香相手に使うのもったいなくて、しまってたマイラケット出しますから。」
「あれ君、右利きなの?さっき左手でやってなかった?」
「友香相手のハンデです。格下相手に利き手じゃない方でよくやりますよね?」
「えっ、そうなの?」
ゲームが始まって、スコア表をめくりながら一色さんが話しかけてくる。
「片平さん、この間は、ごめんね。わたしちょっと、やりすぎたみたいで。」
「なによ、いきなり。」
「片平さん、私より可愛いから、金城君のこと取られちゃったらって考えたら……。」
ふふん、まあそうよね。まだ諦めたわけじゃないし。
「片平さんなら美人だし、付き合いたいって男の子たくさんいるよ。ほら、中学でもユナの元カレの梶川君とか、ハルミの元カレの山本君とかと付き合ってたじゃん。……でも悪いけど、あきらは元カレにはならないわよ。」
「たまたまそうなったわけで、別に取ったわけじゃないわ!」
「(語るに落ちるとはこのことね。)誰も取ったとは言ってないけど。残念ね、片平さん。私じゃなかったら元カレ金城啓を手に入れられたかもしれないのに。」
「!!」
従兄と金城君の試合はセットカウント3ー2で、晴兄の勝ちだが、全然公開処刑にはならなかった。
「ありがとうございました。貸ラケットでそこまでやるなんて、さすがです。」
「君も、カットマンなのに後ろのスペースが全然ないこんなとこで、よくやったよ、ありがとう。」
男たちの友情は成立したけど、私には全然いいことなかった。
今に見てらっしゃい!私、諦めないから!
「あきら、今日はとっても楽しかったし、かっこよかったよ。送ってくれてありがと。」
「また行こうね、友香。」
油断したあきらに真正面から抱きついた。片平さんに渡してなるものか。あきらも抱きしめてくれるが、離すタイミングがつかめなくてもじもじする。
「あなたたち、ご近所さんに見られるとまずいから、そういうのは家からもう少し離れたところでやって。」
買い物のマイバックからネギをのぞかせたお母さんが、無表情で家に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます