第27話 地雷踏んだ

「お母さん、これ、こんな所に置いとくと、危ないよ。」


 あっ、お父さん、お母さんの地雷踏んだ。


「危ないって思うならお父さんが仕舞ってくれればいいじゃないの!どこに仕舞うか決まってるんだから!あなたと私は人生のパートナーでしょう!それとも家のことは私が全部やらなきゃならないっていうの!!」


「あっごめん。ごめんなさい。」


「何が悪かったか、わかってんの!!!」


 お母さんは片付け魔だ。もともとそうだったわけではない。ごく一般的な散らかり具合の家だったのだ。それを片付け魔にしたのはお父さん。

 お父さんは昔、『爪切りって?』『ハサミって?』という、作戦によって、『えっ、あるわよ、はい。』と答えた母に望みの物を自然に取ってこさせる姑息な技を多用していた。

 だが、三人の子育て中のお母さんに、ある日の夕食で『わさびって?』と、やったところ、『じ・ぶ・ん・で・取・り・や・ホ・ン・マ・ニ・-!今、優斗のオシメかえてるでしょ!まだ私、一口も食べてないのに―!』と大激怒された。しかもお父さんは、どうして怒られているのかわかっておらず、お母さんの怒りが倍増した。

 最近ようやく、お母さんの怒っているときは、悪いと思ってなくてもとにかく謝るようになってきた。

 それ以来、子供部屋のもの以外は、我が家では、すべての物の置く場所が決められた。それなのに、冷蔵庫のドアポケットの生姜チューブを、お父さんが見つけられずにまたも激怒された。

 その結果、さらに厳格な場所が決められ、そこに戻しておかないと、『なに、お父さん、私に挑戦してるの?』と、お母さんは爆発しそうになっている。

 片付け魔がエスカレートして、ミニマリスト(必要最小限の物で生活すること)になってきてるのに、お父さんは何も懲りてない。

 それ以外はラブラブ夫婦なのに。



「私、あきらと約束してるから、呼びに来てくれたら出かけるね。」


「あ、友香、お父さんをおいて行かないで。」


 時間通りにあきらが来てくれた。私の部屋を一瞬見せた後で、卓球デートに行くんだ。


「とっても片付いてるね。」


「はい、もう部屋から出て。」


 後ろから押したついでにあきらに抱きついちゃった。えへへ。

 あきらが私の手をつかまえる。

 優斗が無表情で隣の部屋から出てきて階段を降りようとする。


「優斗、下でお父さんとお母さん、喧嘩してるかも。またお父さん、地雷踏んだから。私たち、すぐ出かけるよ。」


 優斗は一瞬迷ったようだが、自分の部屋に引っ込んだ……。





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