第26話 仮装卓球大会

「おい、翔太!オレのドレスのすそ踏んでる!」


「ゴメン、優斗。こういうの、慣れてなくて。」


 今のオレと翔太はドレス姿。

 体育館の扉を開けると、そこはメイドさんにアニメキャラ、ゆるキャラまでごちゃまぜのパラレルワールドだった。


 卓球には正式なユニホームを着用しなくてはいけない真面目な試合と、お楽しみ大会としてひっそりと全国のあちこちで仮装卓球大会が催されている。

 オレと翔太が参加しているのは、かなりランクの高い仮装大会だ。どうランクが高いかというと賞品が、米、牛肉、ブランド豚肉、メロン、マンゴー、扇風機、高級イヤホン等、大変魅力的なのだ。去年、翔太の姉妹がもらってきたハム詰め合わせがとっても美味しかったからと、翔太が一緒に出ようと誘ってくれたのだ。

 もともと、仮装は、翔太姉妹がドレスで、オレ達はタキシードのはずだった。衣装合わせの時も、翔太が銀色で、オレが黒のタキシードで、二人してかっこいいと喜んでいたのに。なのに、今日こうなっていたのだ。姉妹が男装したくなったらしい。


「それにしても、この青のドレスと、ロングヘアのウイッグ、卓球しにくいんじゃないか?」


「ボク、このピンクのドレスより、そっちのほうがよかったな。」


「もっと早く言えよ、翔太。代ってやったのに。」


 周りには、いろんな仮装をしている人たちでごった返している。バスケのユニホームを着て、地毛を赤やら青やら緑に染めている、大学生の人たちが注目を集めている。そんなマンガ、あった気がする。バスケの格好なら卓球もやりやすくていいな。あっちには海賊の一味だ。もう、仮装じゃなくてコスプレだろ。

 今日は試合結果だけじゃなくて仮装のポイントもプラスされるので、みんな気合が入っている。

 あっ、アルプ○の少女、ハイ○だ。ペータ○もおじいさんも、○ッテンマイヤーさんもいる。○ッテンマイヤーさんのメガネと髪、クオリティーが高いな。


 オレ達のダブルス部門、一回戦の相手は、妖怪の小学生高学年ペアだった。ダブルスは、ペアの二人が代りばんこに打たなくてはならないルールがある。パートナーが打つときは、邪魔にならないように退くのだが、ロングの髪がなびき、ドレスがひるがえって華やかかもしれないが、動きにくい。ダブルスのフットワークを練習してきたが、仮装のせいであまり上手くできなかった。なんとか勝てたが、これはやりなくいな。


「優斗、チャイナ服の方がよくないか?」


「そうだね。卓球王国中国の服だし。一考の余地はあるな。」


「髪もアップだと邪魔にならないと思うけど。」


「編み込みとかもいいかも。」


 反省していると、女子のダブルスで、人だかりが出来ている。

 ハイ○と○ッテンマイヤーさんチームが異常に強い。ハイ○は小学一年生くらいの女の子なのに、正確にビシバシ返してくる。素人の動きではない。小さい子には、ネット際に落とすと、届かないから姑息に狙われるけど、○ッテンマイヤーさんがそうさせないように打っていた。


「おい、あのハイ○、恵ちゃんじゃないか?」


「えっ、あのテレビにたまに出てくる卓球少女の?」


「○ッテンマイヤーさんが、お母さんの鬼コーチだよ。」


「あそこの一家、レジャーも卓球か!」



「恵!牛肉は私たちのものよ!」


「はい!お母さん!」



 勝てる人はいないだろう。牛肉は恵ちゃん一家のものだ。

 そこまでして……。という人はいない。仮装のレベルが高すぎるからだ。

 オレ達もペータ○とおじいさんペアにやられた。恵ちゃんのお父さんとお兄さんだ。強い人と当たれただけよかった。


「翔太、オレ、次は必ず賞品を手に入れてみせるよ。」


「ボクだって同じ気持ちだ。」


「卓球、頑張ろうな。」


「うん、次はどんな仮装にするか、作戦を立てよう。」


「審査員受けする、よく知られてて、動きやすい仮装がいいよな。」


 オレ達は二人とも、正道の卓球から少しずれているのに気が付かなかった……。














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