第23話 小話 ブラックリリー②

【和斗君、私、あなたのことが好きなの、付き合ってください。】

【ごめん南村さん、俺、君のことそんな風に思えないから。】


 ギャーやめてーブラックリリー!あっちいけ――!

 それでも私は負けずに和斗君を誘う。


「今日うちでカレーパーティーをするけど、来ない?」


「カレー……。行こうかな。」


 カレー好きか!



「はい、どうぞ。たくさん食べてね。」


 ローテーブルにカレーとサラダと福神漬けを並べ、和斗君が座布団に座る。


「カレーパーティーって言ったよね。何で俺と南村さんしかいないの?」


「いやその、他の人は都合が悪くて…っていうか、あの、和斗君に話があって……。」


「何?またなにか問題でも?あっ、ビールいらないから。」


 ピシャリと断られる。やっぱり初めに姑息なことをしたの、怒ってるんだ。

 私だって逆の立場だったら……大喜びするのに。


「この前のことなら、驚いただけで、何とも思ってないから。このカレーうまいよ。」


「和斗君、何でもうまいって言ってくれるね。このカレー、箱に書いてある通りに作っただけだよ。」


「えっ!(やばい、おふくろの味じゃないか!母さんは箱に書いてある通りに作るからな)。」


「だって、これでお給料もらってる人が書いたレシピだから、一番おいしいと思って。おかわりいる?」


「下さい。」


 男の人がもりもり食べるのっていいな。私だけか?


「あの、和斗君……。」


「何?」


「ううん、何でもない。」


【ここは急ぎ過ぎないでゆっくり距離を縮めたら?まだ卒業までに一年以上あるし。大体、結婚とか名字変えるとかいわれてすぐ付き合う気になる男って、怪しいよ。財産目当てとか。あっ、カレー気に入ってたみたいだから、持って帰ってもらったら?】


 そうだね、ブラックリリー。有難う。私、急ぎ過ぎてたかも。


「和斗君、余ったカレー、よかったら持って帰って。」


「いいの?ありがとう。」


【和斗君、カレーを入れたタッパーウェア返しに来なさいよ。そしてまたご飯を食べてタッパーウェアにおかずを持って帰って、……ククク、この輪廻から逃れられるかしら。私はブラックリリー。ブラックだけど、一応百合の味方よ。】


 でかしたわ!ブラックリリー!

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