第20話 汚部屋脱出
「ねぇお母さん、私の部屋、棚、というか収納が少ないから散らかるんだと思うけど。」
私は大きな問題と正面から向き合っていた。
私の部屋が汚部屋、いや、物が多すぎるということ…。
「捨てられない人って、絶対棚を買おうとするのよね。壁が空いてると、そこに棚を置きたくなるの。」
お母さんが、容赦なく私を谷底に突き落とす。
通りかかった優斗が、谷底の私をコンクリートで埋める。
「姉ちゃん、服が多すぎるんだよ。床にあふれてるじゃないか。しかも、変なやつばっかり。金城さんと会うのに着られない服は捨てろよ。」
「でも、部屋着とか。」
「今着てる部屋着で金城さんに会える?」
「……会えない。」
私は可燃ごみの袋を五枚持って自分の部屋に入り、瞑想した。
そういえば、ダイエットする以前の服はサイズが合わない。
中学の時に買った服は子供っぽくて着る気にはならない。
私は悟りを開いたブッダのようにタンスやクローゼットを開けていった。
中のものを一旦全部出す。
たちまち床の上に服の山ができ、唖然とする。
こんなにたくさんあったのか……。体一つにこんなに服はいらない。
買ったけど、着心地が悪くて数回しか着てない服。
中学の時、友達と色違いで買った服。
破れてないので取っておいたTシャツ。
広告のモデルさんがはいてたらかっこいいのに私には思っていたのと違う感じになったスキニーパンツ。
大好きで、たくさん着たけどヨレヨレになったトレーナー。
同じような黒のパーカーが三枚。
迷ったときはあきらの顔を思い出し、この服であきらに会えるかと考えるとほぼ捨てる決心がついた。
一枚一枚に、ありがとうと感謝しながら情け容赦なくゴミ袋に放り込んでいく。ゴミ袋は五枚では足らなかった。
ついでにくたびれてきた下着も思い切って捨てた。金城君どころか、女子の友達にも見られたくないのが、引き出しに結構入っていた。
床を覆っていた服は、私の
高校の制服とか、体操服、弓道の道着や部Tなんかの必要なもの以外はほとんど捨てられ、クローゼットはスカスカだ。
「お母さん、服買ってください。」
「ようやく友香に服を買ってあげられるようになったわね。」
片付け後、買い物ついでに可愛いデザインの上着や、水色で少し紺の入ったバックシャンワンピースを買ってもらった。
「これならエプロンしてても後ろに可愛いアクセントがあるから金城君の家に着ていくといいわよ。」
「あんまり安っぽい服はよくないわね。それはやめて、こっちにしなさい。」
「露出が多いのは感心しないわ。ノースリーブはご両親が好きじゃないかもしれないから、やめておいた方がいいと思うの。」
今まで私が選ぶ服に何かを言うことは無かったのに。
お母さんの本気がさく裂して、怖いくらいだった。
もっと早くに片付ければよかった。
友香から啓へのライン
『今日、クローゼットを片付けました。』
『きれいになった?がんばったね。』
『机周りはまだだから、汚部屋脱出にはまだかかるかな。そんなことより、可愛い服買ってもらったからスイーツ食べにに行こうよ。』
『スイーツはいいけど、やっぱり汚部屋だったんだね。』
キビシー!
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