第18話 獣人たちの秘め事
「セックスしてえ」
馬面どころか人面馬みたいな顔立ちの大男が純粋たる欲望をただ口にする。
獣人族・ラバウル盗賊団第4大隊隊長アガメムノンは一言でいえば男性器に胴体と四肢がついたような男である。
土地がやせていて貧富の差が激しいダミス連合において比較的裕福な家庭に生まれ育ったアガメムノンだったが、彼は珍しく人間の奴隷を確保するという危険な仕事に携わった。
理由は簡単。
奴隷なら何しても合法だからである。
偉大なる祖、ルシフェルが残した禁忌の石板には夫婦以外の異性との性行為を禁ずる条文が書かれているので、おいそれと他人に手出しはできない。しかしそれを破ることなど考えることはなかった。
だが家に供給される奴隷たちでは彼の旺盛すぎる性欲を満たすことはできず、彼は欲望のはけ口を外に求めた。
「そうだ、自分でヤル相手を確保すればいいんだ。」
そう考えた彼が盗賊に入ることは迷いがなかった。
彼はその旺盛すぎる性欲からくるモチベーションと強靭な体格と体力をもって次々と頭角を現し、その性質は40代になっても衰えを知らなかった。
「隊長は商品を傷ものにするから商品的価値が下がる」とぼやく部下も同僚もいたが無視し、腕力と精力だけで大隊長まで辿り着いた。
力のあるものに従え。
明確な国家のないダミス連合において力という不文律に守られたアガメムノンを止める物はいなかった。
「ン……ア─────ッ!!! ちくしょう勃起が半端ねェ。早く帰ってこねえかなァあのランファルってメスはよぉ!」
地団太を踏んで有り余る欲望を叫ぶが生憎と当の彼女はここにおらず、エルナ村の襲撃に向かっている。
今頃帰還の道中であろうが、その数日を我慢できるようではアガメムノンとはいえなかった。
同僚は男所帯なのでどんな格好をしていても禁忌的には問題ない。
だがそれでも屹立した男性器を風にさらして欲望を夕日に向かって叫ぶリーダーの姿というのは部下たちにとってはいささかシュールすぎる光景だ。
「ハァハァ、早く帰ってこねえかなぁもう辛抱たまらねえぜ」
両手の指をわきゃわきゃさせながらよだれを垂れ流して舌なめずりするリーダーに近づきたい部下などいないので、必然彼は西のリーダー専用キャンプで一人吐き出せぬ欲望を声に出している。
彼にしては珍しいことにランファルが返るまで1日半も奴隷遊びも自慰も我慢しているあたり彼の本気度がうかがい知れる。
そう、彼はランファルに執着していた。
彼女の人生の過酷さを物語るように鍛え上がられた肉体とそれに反比例するようについた豊かな乳房。
獣人の野性味を残しながら彼の大好物の人間の少女の容姿を色濃く残した外見。征服し、一族を辱めてもなお諦めない心の強さ。
全てが彼のストライクゾーンのど真ん中にあった。
ただ犯すだけでは物足りない。あの女には心の支えを奪い取り、絶望と悲しみで心を折りつくしたうえでその尊厳と肉体を両方同時で犯さなくてはならない。
彼にとっての『愛』とは与えるものではなく奪うもの。精神的支柱をすべて奪い去り丸裸になった心と体を犯してこそ彼の愛は成るのだ。
「俺のッ聖剣はッ心を折る聖剣!! そう! 俺のチンポは!! 心を衝くチンポだッ!!!」
戦隊シリーズの変身シーンのような挙動で愛を叫ぶ。世界の中心はいま、ここにあるのだ。少なくともこの変態にとっては。
巨根の多い馬の獣人のなかでも特別デカイ一物がブルンブルン揺れる。
帰ってきたらお帰りの挨拶から叩き込んでやる。彼女が返ったら存分にハメ倒してやろう。
そう心に誓うと部下が大急ぎで走ってくる。
この姿の自分に進んで近づこうとする部下がいないため珍しいこともあるものだなあとのんきなことを考えていたアガメムノンであったがその後の部下の報告に屹立した男性の象徴が理性を取り戻した。
「隊長! 緊急の報告があります!」
「なんだ! もう帰ってきたのか! もうギンギンで我慢できねえぜ!」
部下の男は年中発情しているこの上司にかなり辟易しているが、表面上だけでも見繕って報告する。というか彼に今更な上司の態度を気にしている余裕はなかった。
「違います。っていうか敵襲です! この戦力が分散している状況で敵傭兵部隊30名ほどが襲来し、あっという間に前線が壊滅されました!」
「なにぃ!! 俺の息子のこの衝動はどこに向ければいいんだ!」
「目の前の戦いに向けてください!」
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