49枚目 そして小説になる2



「『伯爵サー・ドラクール』、君には罪を償ってもらおう。吸収した全ての世界を、もとに戻すのだ」


「ええ、あの少女の命にかけて」


混じり合った世界をほどいていく。

肥大化した第6世界に中にある、歪みを探して一つ一つほどいてゆくのだ。


それは気が遠くなるほどの時間がかかるだろう。



「泣くなよ『おっさん』。あの娘が浮かばれねぇだろ」


「わ、わかってますよ、『鬼』くんも元気で」




「また会えるといいねー」


「『けもみみ』さん、今度『スローライフ』の世界に来てみませんか?」


「おっ、いいねー」




「私は第7世界に戻るわ。仲間が待ってるもの」


「ふふ、楽しそうですね」


「『神様候補』さんっ」


「はい」


「げ、現世でもお会い出来ませんか?」


「『諜報員』さん…」




「若い者は良いの」


「『黒の剣聖』だって、そんなお年ではないでしょう」


「『白の剣聖』、君も今度の大会に出るかね?」


「はい。お会いできるのを楽しみにしております」


「ねーねー、何の大会?」


「剣道だ」




賑やかな一行を、少し離れた所で局長が眺めている。彼らはこれから各々の世界に戻るか、第0世界へ戻って行くのだ。


少し寂しげな局長の元へ、『黒の剣聖』がやってくる。


「局長、『伯爵』に伝えて頂きたい事がある」


少し眩しげに『黒の剣聖』を見つめる局長は、


「何でしょう?」


とだけ返す。


「人探しには『張り紙』を使えと言っておいてくれぬか」


「…異世界にえにしがある者は、あの『張り紙』のあるポータル・ロビーに必ず来る、という事ですな」


「ふっ。よくわかっておられる」


「では」、とお互いにお辞儀する。


彼女は——『黒の剣聖』は知っているだろうか?


管理局局長が第0世界人の前に姿を見せる事は異例中の異例、おそらく二度と顔を合わせることはないという事を。


「我々の寂しさが伝わっているでしょうか…」


「それを言うな、局員G」


1人、また1人と姿を消してゆくロビーに全局員の拍手が響き渡る。


最後の1人を見送ると、局長は静かにきびすを返した——。





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