48枚目 そして小説になる

「局長、お話ししたいことがあります」


職員Fが血の気の引いた顔で切り出した。流石さすがに局長も異変を感じる。


「なんだ?」


「彼女——『JK』は確かにレンタル・ボディですが、転移時に本体の方が病死しておりまして、この身体を失うことは…」


皆が息を飲む。

地に伏した本人だけが、口元に薄く笑みを浮かべている。


「死ぬ事と同意です」


その場にいた仲間たちが、局長が、『伯爵』が、驚愕の色を隠せない。


「すまない…!私のせいで君の命を!」


『伯爵』がひざまづいてこうべを垂れる。

それでも『JK』は微笑んだままだ。


「どうせ、もともと死んでるんだ。ウチはここへ来れて、ラッキーだったよ」


「エリちゃん…」


側で泣き崩れる『おっさん』にも、彼女は声をかけた。


「…泣くなよ、大人のくせに。…まぁまぁ楽しかったさ」


仲間に囲まれながら、『JK』は嬉しそうに言う。


「…ずっと病気でさ、入院してばっかだったんだ…最後にいっぱい、ワガママ言えて、楽しかった…」


『JK』の手を握る『おっさん』の手に、ぎゅっと握られる感触が一瞬だけあった。すぐにその力は薄れて行く。


「エリちゃん?」


「…ありがとうね…」


彼女はゆっくりと瞳を閉じた。


『スローライフ』

『けもみみ』

『留学生』

『黒の剣聖』

『白の剣聖』

『諜報員』

『鬼』

『神様候補』


そして『おっさん』


皆の慟哭が黄昏の世界に響いて行く——。






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