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そう言って制服のポケットからケータイ電話を取り出し、蹲っている彼の姿を写メに撮った。


「おいっ!」


「わたしにこれ以上、変なことをしないように保険よ。もししたら…分かっているわね?」


ニヤッと笑い、彼を見下ろす。


「ひっでぇ女…」


彼も負けじと笑い返すも、その顔色は白い。


「お褒めいただき、光栄の至り。わたしをそんじょそこらの女と思わないことね」


わたしはそう言って、カバンを持った。


「じゃ、わたしは帰るから。先生が来たら、保健室にでも連れてってもらいなさいな」


にこやかに微笑み、わたしは彼を置いて、教室を出て行った。


「あっ危なかった…」


けれど教室を出た途端、体がふらついた。


体が熱くてたまらない…!


吐く息も甘くて、きっと顔なんか真っ赤だろう。


不覚にも、彼に言い寄る女の子達の気持ちが分かってしまった。


あんなフェロモンの固まりにちょっとでも触れたら、参ってしまうのも当然だ。


「はぁ…」


何とか強気を演じられたけど、明日からどうしよう?


モロあの色気に触れてしまったら、意識せずにはいられない。


だけどダメだ!


これ以上触れたら、ヤケドどころの話じゃない!


<ブンブンっ>と頭を振り、邪心を払う。


好きになる人は、真面目な方が良い。


あんなタイプを好きになってしまえば、あとは泣いて暮らすだけだ!


…彼を好きな、女の子達のように。


わたしはそんな未来はゴメンだ。


確かに…その、キスは気持ち良かった。


何にも考えられず、ただ彼のキスに酔えたあの時のことは思い出すと恥ずかしいのと同時に、体に甘い疼きがよみがえる。


「んっ…!」


思わず内股になる。


今が人気の少ない放課後で良かった…。


まっ、彼もきっと一時の興奮からしたようなものだし、明日になったらきっとアッサリしているだろう。


何せわたしには一応、彼の弱味を握っているし、多分…大丈夫!


…と思っていたのに。


翌朝、教室の引き戸を開けると…。


「おはよう。みん…」


「おはよう。オレの子猫ちゃん」


<ぞわっ!>と全身に鳥肌が立つのと同時に、彼に正面から抱き付かれた。


「なっ!?」


途端に周囲からは女子生徒達の悲鳴が響き渡る。


「ちょっ、朝から何すんのよ?」


「ん? 朝の挨拶」


ハグがかい! 


「というか昨日のこと、忘れたの?」


わたしは暗に写メのことをチラつかせた。


しかし彼は余裕の態度を崩さない。


「分かっているよ。アレ以上のことは、お前の許しがない限りはしない」


「あっそう…」

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