4

わたしは恐る恐る舌を差し出す。


すると彼は嬉しそうに眼を細めて、強く吸ってくれる。


「んんっ、うふぅっ…!」


気持ちイイ…!


キスってこんなに気持ちの良いものだったの?


目の前には、彼の整った顔が間近にある。


彼の体から匂う香水や、唾液の匂いでよりいっそう思考が鈍くなる。


わたしの中が、彼でいっぱいになる…!


夢中になる!


目が潤んだせいで、何も見えなくなる。


ただ、彼だけを感じることができる。


唇から、彼と溶け合う感じがたまらないっ…!


「んふぅっ…。あんっ、ふっ」


吐息が肌に触れるたびに、体に甘い痺れが走る。


だけど彼の足がわたしの足の間に差し込まれた時、ふと我に返った。


「えっ…ちょっと」


足はどんどん差し込まれ、わたしの体の一番敏感になっている部分に触れた。


「ちょっと!」


そこでようやく、冷静さを取り戻した。


「何だよ? ここまできて、お預けはナシだぜ?」


「ちょっと待ってよ! ここ、教室でしょうが」


あくまでも小声で怒鳴るも、内心は慌てるどころじゃない!


「その方が燃えるだろう?」


再び耳元で囁かれても、熱くはならない。


「冗談っ…! アンタはムードってものを考えられない、無神経ヤローなの?」


精一杯威勢を張るも、彼の足は以前動いていない。


いやっ、動かされるとスッゴク困るんだけど!


「そんなつれねーこと言うなよ。せっかく二人っきりなんだしさ」


そう言うと彼の手がわたしのお尻を揉み出した。


「うぎゃっ! 何が二人っきりよ! 見回りの先生が来る時間になるんじゃないの!」


彼の腕を押さえるも、構わず撫で続けられる。


しまった! 油断し過ぎた!


飢えた色情魔の暴走を、甘く見過ぎていた!


「それまでには終わらせるから」


「…へぇ。アンタって、早かったの?」


ムッと彼の顔が歪んだ。


「そういうことは、女が言うもんじゃないな」


「言わせたのはアンタでしょう?」


「…さっきから気になっていたんだがな」


「何よ?」


「オレの名前は高嶺広喜だ。『アンタ』じゃない」


「そうね、高嶺。とっとと解放してくれるかしら?」


「ったく…。さっきまでの色気はどこにいったんだよ?」


「余計なお世話よ!」


わたしはついにキレて、彼の股間を蹴り上げた!


「ぐおっ!?」


「っ!」


自らも多少ダメージのある攻撃だけど、このままじゃしんどかった…。


彼はその場に蹲る。


「情けない格好ね」


「ちょっ、おまっ、その攻撃はないだろ?」


「アンタが悪い!」


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