第2話 夜の物語

夜は夜であるというそれだけで

どこか物語があったのだ

深いのになぜかふわりと緩く

ほどけてしまいそうな闇と

妖艶な光の糸を吐き出す月

そして朧気な記憶のように瞬く星の

そのどれもがこの長い夜の抱く

漠然とした物語性を助長させて

暗い夜の端っこで誰もが

膝を抱えて俯きながら闇を受け入れた

闇はあらゆるものを覆い隠す

密やかな恋情も秘められた愛も

そしてそれを持て余した者たちは

闇に身も心も全てをさらけ出す

垂れ流しの感情を受け止め

咎めるでも背中を押すでもなく

そこに在るだけの肉体は

進行していく夜にただ物語を憂う

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る