暗がりに叫ぶ

マフユフミ

第1話 雨に溺れる

雨に溺れる人形の

硝子の目を見ながら僕は

朽ち果てていく感情の

抜け殻だけを拾い集め

閉ざされていく光は

青くその姿を眩まし

深く深いその流れの底に

ずぶずぶと沈んでいく


暴かれることのなかった

内に秘めたその激情は

冷たい水の底にいてもなお

熱を失うことを忘れ

何も感じないフリをした

愚かで純粋な少年の

伸びやかなその身体を

麻薬のように蝕んでいく


雨に溺れる人形の

硝子の目を見ながら僕は

この何者でもない肉体に

鈍く己の爪を立て

どうかその瞳だけは

濁ることのないようにと

精一杯の誠実をもって

心の奥で祈るだけ



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る