新・良心論 『とても理屈っぽいお話』

良心論というものが存在する。


人間には3つの良心があり、すべての良心を貫く情動により犯罪が起こるのだと。


一つは他律的良心。

みんなが守るべきルール。

ポイ捨てはいけないことだ。

みんなが守っているのだから、守ろうとする良心だ。


人間の一番外側にある良心であり、簡単に作れるし、壊れてしまう。

破れ窓理論もこの良心が影響している。

日本人は、この集団的良心がとても強いとされている。

治安が良い反面、集団のルールに属さないものを弾く、陰湿な強さを持っている。


一つは神律的良心。

宗教など、有意識下で積み重ねた、外的要因と内的要因の中間点。

神さまが与える外的ルールと、それを順守する内的なルールによって構成される。

死後さばきにあう。

自分ではどうにもならない絶対的な存在や死などの未来への不安を担保として、ルールを厳守することで救われるとする考え。

個のアイデンティティーが強いとされるアメリカや欧州が、コミュニティーとして団結するうえで、神律的良心は大きな影響力を持つとされている。

後述する三つ目の良心は外の世界と反発することが多い。

自らの正しさを守りつつ、社会で生きる上では、しなやかな宗教が求められた。

日本においては神律的良心は弱いとされている。

しかし、漠然とした不安、タタリや呪いといった一種の神通力的な力を他律的良心によって増幅する傾向がある。


いろんな意味で真ん中に属するこの良心は二つの良心の要素を合わせ待っている。


三つめは自律的良心だ。

自らが築き上げた正しさの集積。癖や習慣、信念によって構築された「わたしらしさ」。

犯罪における最後のストッパーであり、個の信念の強さは最終的にはここに依存する。

人は変わることが出来るのは、自律的良心によるものが大きい。

環境的な要因での構成が効果が薄いのは、他律的、神律的良心を強化したところで、結局のところ一人になった時に選択をするのは自律的良心だからだ。

自律的良心は、個人の選択によって磨かれる。

一つの選択を行い、その責任を負う。

その結果どのような成功体験を得たかによって、その後の行動が変化する。

行動の連続により、癖となり、個性となる。

その個性が、自律的良心を確立する。

ならば、自律的良心とは個々の選択だ。


選択の理由を他者に依存すれば、他律的良心だけが膨らんで、自律的良心はちっとも成長しない。

そこに楽しく生きるヒントがあるに違いない。

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