今日も、家に灯がともる
行よりも帰りの荷物は重いほうがいい。
辛さよりも期待が大きいから。
獲物を仕留める瞬間よりも、獲物を抱えて玄関を開ける瞬間が好きなのだ。
帰路の先にちょんと屋根が見えて、家がそこにあることにほっとする。
あるべきものが、そこにあることに幸せを感じる。
守るべき日常が、ちゃんとあり続けることが愛おしい。
獲物を夕飯に加工する。
休みたい欲求をぐっとこらえて、下処理をやってしまう。
熱いふろを想像しながら、黙々と手を動かす。
少しずつ効率化されていく動きに、若干の喜びを覚えながら、作業に集中する。
洗濯をパリッと干し終えて、米を研ぐ。
料理と並行して風呂を焚き、軽く部屋を整える。
頭の中にある問題ごとを一つ一つ取り除いていくのが得意だ。
どんどんと気持ちも軽くなってゆく。
それに付いていくように、部屋も清浄な空気に満たされる。
風呂に入る。
意識を空っぽにした後、一日を左端から順に思い返す。
早回しのテープの中で、つっかえたところだけを一つだけ心の片隅にとっておく。
体をゆっくりと洗う。
すこし、風で涼んだ後に清潔な服を着る。
縁側でお茶を飲む。
太陽がゆっくりと沈んでゆく様子を見る。
道に通りかかったご近所さんと少しだけしゃべって、お茶を片付ける。
お湯をかける音が聞こえる。
火を再びかけて味見をする。
二人でご飯を食べる。
今日の一日を語り合う。
鹿が獲れたこと。
服の汚れのこと。
それだけでも、十分すぎるくらいに。
風呂に入っている間に食器を洗う。
頭の隅に取っておいた、鉈の研ぎを済ましてしまう。
すこしだけ筆を取る。
たわいもない日記を丁寧に時間をかけて書いた。
電気を消す。
だんだんと眠気がやってくる。
お互いの顔を見る。
少しだけ可笑しくて、目を閉じる。
明日がまたやってくる。
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